聖徳記念絵画館

聖徳記念絵画館：明治天皇の生涯と近代建築の融合

聖徳記念絵画館は、東京都新宿区、明治神宮外苑の中心に位置する美術館です。幕末から明治時代にかけての明治天皇の生涯を、80点もの貴重な絵画で描いた歴史的建造物であり、その建築美と展示内容から、日本の近代史と美術を理解する上で重要な場所となっています。

建物の歴史と建築

絵画館の建設は、明治天皇崩御後の1919年に始まり、1926年に竣工しました。明治神宮外苑造営の中核をなす建物として、旧青山練兵場の跡地に建てられました。設計は公募により選ばれ、小林正紹の案を元に、高橋貞太郎、小林政一らが設計を担当しました。

鉄筋コンクリート造り二階建て、高さ約32mのドーム状の建物は、セセッション様式の影響を受けた重厚な外観が特徴です。花崗岩貼りの外壁、大理石とモザイクタイルの床、そして精緻な石膏彫刻が施された内部は、当時の最新技術と洗練された美意識を反映しています。

一方、明治神宮宝物殿が伝統的な木造建築様式を踏襲しているのに対し、絵画館は西洋の近代的な技術と意匠を取り入れています。この対比は、伝統と近代化という明治天皇の二面性を象徴していると言えるでしょう。

絵画館の完成は1926年でしたが、絵画の制作はその後も続き、最終的に80点が揃ったのは1936年でした。1968年には絵画館学園が開校し、美術教育の場としても利用されました。その後も、絵画の修復や壁画の保護のための改修工事が行われ、現在に至っています。2003年には東京都選定歴史的建造物に、2011年には国の重要文化財に指定されています。

展示内容

絵画館には、明治天皇と昭憲皇太后の生涯を描いた80点の絵画が常設展示されています。日本画と洋画がそれぞれ40点ずつ、年代順に並べられています。これらの絵画は、当時の著名な画家たちが制作したもので、明治天皇の治世における重要な出来事を克明に描いています。

展示されている絵画の題材は、明治天皇の個人的な出来事よりも、明治時代の国事にまつわる出来事を重視して選ばれています。また、特定の功臣との関係性よりも、国民との広範な関係性を重視した選定が行われています。制作にあたっては、綿密な史料調査や現地調査が行われ、当時の宮殿や御用邸への立ち入り許可も得られています。

明治神宮外苑の景観

絵画館は、明治神宮外苑のイチョウ並木の中心に位置し、その景観に重要な役割を果たしています。並木は絵画館に向かって低くなっており、遠近法を利用して絵画館をより荘厳に見せる効果を生み出しています。このイチョウ並木は、1923年に植栽され、現在も多くの観光客や映画・ドラマのロケ地として親しまれています。

近年は、絵画館周辺の超高層ビル建設による景観への影響が懸念されています。東京都は景観計画で歴史的建築物の眺望保護に努めていますが、絵画館の後方に建設が計画されている高層ビルは、景観に影響を与える可能性があります。

アクセスとその他

絵画館へのアクセスは、JR信濃町駅や地下鉄各駅から徒歩でアクセスできます。開館時間は10:00～16:30（最終入館16:00）、休館日は水曜日です。入館料は500円です。絵画館前には、大正時代に建設されたアスファルト舗装が現存し、土木遺産として保存されています。また、毎年警視庁機動隊の観閲式も行われています。

聖徳記念絵画館は、歴史的建造物としての価値だけでなく、明治時代の歴史と美術を学ぶことができる貴重な場所です。明治神宮外苑を訪れた際には、ぜひ訪れてみてください。

もう一度検索