元朝の行政区分

元朝の行政区分と行中書省制度

元朝における行政制度の重要な特徴は、行中書省制度の採用です。この制度は中国の歴史において先例があり、特に金朝からの影響を受けています。元朝では各地方に「○○等処行中書省」が設立され、一般には「○○行中書省」または「○○行省」として知られていました。元々、この制度は金朝時代に中央政府から地方に派遣される臨時の行政機構として導入されたものでありました。

元朝における行中書省の役割は、初期には主に南宋に対する攻撃といった特定の目的のために設置されていたものの、次第に地方政務を上手く管轄する行政機構へと進化しました。結果的に行省は、地方における行政の第一級区画としての地位を確立しました。

行中書省の構成と変遷

元初期の各行省は非常に広範囲に及んでおり、その管轄範囲や構成は頻繁に変更されていました。しかし、元朝中期に入ると、制度が安定し全国的な整備が進み、最終的には中書省直轄地、宣政院制地区、そして11の行省が確立されました。

行省の下にはさらに路、府、州、県といった階層が設けられました。具体的には、路は行省の管轄下に置かれ、府と州は行省に直接所属するものと、路によって管轄されるものとに分かれていました。県についても、路直轄と府・州管轄の二つの種類が存在し、それぞれの行政特性を見出すことができました。

直轄地域の特性

元朝の国都であった大都とその周辺地域、いわゆる「腹裏」と称される部分は、行中書省の直轄地域と位置づけられました。この腹裏には、現代の河北、山東、山西、河南、さらには内モンゴルの一部が含まれていますが、ここには行省は設置されませんでした。また、全国の仏教関連の事務を扱うために設立された宣政院（元初期には総制院と称されていた）も存在し、仏教の管理に加えて青蔵高原の軍事および政治的事務も管轄しており、一種の特別な直轄地域を形成していました。

特殊行省の設置

元朝では、特定の地域に対して特殊行省が設置されることもありました。

• - 交趾等処行中書省（安南行省）: 安南国に設置されました。
• - 荊湖占城等処行中書省（占城行省）: 占城を攻略した後に新たに設置されました。
• - 緬中等処行中書省: 現在のミャンマー地域に設置されました。

これらの特殊行省は、それぞれ特有の地域的課題に応じた行政機構を提供し、元朝の行政管理に貢献しました。元朝の行中書省制度とその関連の行政区分は、国家の運営において非常に重要で複雑な背景を持っていたのです。

参考文献

• - 『元史』
• - 『中国歴史地図集』
• - 周振鶴『中国行政区画通史 元代巻』(復旦大学出版社 2009年)

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