元湛 (漁陽王)

元湛（げん たん、491年 - 528年）は、北魏時代の皇族であり、その生涯は官僚としての活動と悲劇的な最期によって特徴づけられます。字は珍興（ちんこう）。

出自と初期の経歴

元湛は、章武王元彬（しょうぶおう げんひん）の四男として生まれました。511年（永平4年）に秘書著作郎（ひしょちょさくろう）に任じられたのが、記録に残る最初の官職です。その後、任城王元澄（にんじょうおう げんちょう）の配下で司空騎兵参軍（しくうきへいさんぐん）を務め、その能力を発揮しました。

官僚としての昇進

元湛は順調に昇進を重ね、尚書左司郎中（しょうしょさしろうちゅう）に任じられ、左軍将軍（さぐんしょうぐん）の号を受けました。さらに、中書侍郎（ちゅうしょじろう）に転じ、吏部郎中（りぶろうちゅう）を兼任するなど、重要な役職を歴任しました。前将軍（ぜんしょうぐん）・通直散騎常侍（つうちょくさんきじょうじ）の位も授けられ、廷尉少卿（ていいしょうけい）にまで昇りつめました。

河陰の変での最期

528年（建義元年）4月13日、元湛は河陰の変（かようのへん）において、志半ばで殺害されました。享年38歳という若さでした。彼の死後、その功績が認められ、使持節（しじせつ）・征東将軍（せいとうしょうぐん）・都督青州諸軍事（ととくせいしゅうしょぐんじ）・青州刺史（せいしゅうしし）の位が追贈され、漁陽王（ぎょようおう）に追封されました。

家族

元湛の妻は薛慧命（せつ けいめい、薛胤（せついん）の五女）です。息子には元俊（げんしゅん）がおり、父の死後、漁陽王の封を嗣ぎましたが、北斉（ほくせい）が建国されると爵位を降格されました。

墓誌銘

元湛の業績を称える墓誌銘として、「魏故使持節征東将軍儀同三司都督青州諸軍事青州刺史元使君墓誌銘（ぎこしじせつせいとうしょうぐんぎどうさんしととくせいしゅうしょぐんじせいしゅうししげんしくんぼしめい）」が現存しています。また、妻である薛慧命の墓誌銘「魏前将軍廷尉卿元公妻薛夫人墓誌銘（ぎぜんしょうぐんていいけいげんこうつませつふじんぼしめい）」も残されており、当時の社会情勢や家族関係を知る上で貴重な資料となっています。

まとめ

元湛は、北魏の皇族として生まれ、官僚として着実にキャリアを積み重ねましたが、河陰の変という動乱の中で非業の死を遂げました。彼の生涯は、北魏末期の政治的混乱を象徴する出来事として、歴史に刻まれています。

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