元稹

元稹（げん しん）

元稹（779年 - 831年）は、唐代中期の重要な詩人、文人、政治家です。字は微之（びし）。白居易とは生涯にわたる親友であり、その名声から二人は「元白」と並び称されました。彼の作品は、当時の社会情勢を反映したものが多く、文学界に新たな潮流を生み出しました。

生涯

元稹は、北魏の皇族の末裔とされていますが、彼の代には没落していました。幼くして父を亡くし、母親の手で育てられました。15歳で学問の道に入り、28歳で進士に合格しました。その後、官僚として様々な役職を歴任しましたが、政争に巻き込まれ左遷されることもありました。しかし、その才能は穆宗に認められ、宰相にまで上り詰めました。しかし、宰相の座は長くは続かず、地方官を経て、53歳で病没しました。

文学

元稹は、詩人としての才能に優れており、特に楽府体の詩に社会批判の要素を取り入れた「新楽府」を開拓しました。また、物語的な手法を詩に取り入れ、読者に深い感動を与えました。白居易との交流は深く、互いに詩を贈り合う中で、次韻という形式を確立し、「元和体」または「元白体」と呼ばれる独自のスタイルを築き上げました。

鶯鶯伝

元稹の作品の中でも特に有名なのが、伝奇小説『鶯鶯伝』です。この作品は、男女の恋愛模様を巧みな構成と美しい文章で描き出し、後の小説に大きな影響を与えました。

悼亡詩

私生活では、31歳の時に妻の韋叢を亡くしており、その悲しみを「遣悲懐」という悼亡詩に託しました。この詩は、妻への深い愛情と喪失の悲しみを切々と歌い上げ、多くの人々の心を打ちました。

元氏長慶集

彼の作品は、『元氏長慶集』にまとめられています。この書物は、彼の文学的業績を知る上で貴重な資料となっています。

評価

元稹は、その才能と努力によって、文学界、政界で名を成しました。彼の作品は、社会に対する鋭い批判精神と、人間感情の機微を捉えた描写によって、今もなお多くの人々に愛されています。

主な著作

元氏長慶集
鶯鶯伝
* 遣悲懐

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