兄猾

兄猾（えうかし）についての解説

兄猾は古代日本の文学作品『古事記』や『日本書紀』に登場する歴史的な人物です。本名は『古事記』では兄宇迦斯とされ、弟猾と共に記されています。彼の物語は神日本磐余彦天皇との関係を通じて語られ、彼の運命がどのように展開したのかを見ていきます。

経歴

兄猾と弟猾の兄弟は、神日本磐余彦天皇が八咫烏の導きを受け、道臣命の助けを借りて大和の菟田穿邑へ到着した際の主要な役割を果たしました。歴史的な記録によると、環境は厳しく、兄猾は磐余彦に呼び出されますが、その場には現れませんでした。

『古事記』によれば、彼は遣いに来た八咫烏に対して攻撃的な態度を示し、鳴鏑を射返してこれを追い返す行動をとります。これは、彼が直接的な対決を避ける意思を表しているとも解釈できます。兄猾は、磐余彦の集めた軍勢の威を見て恐れを抱き、対抗することができないと判断しました。そこで彼は、目の前の危機に対処する方法として、大殿を新たに建設し、表面的にはもてなす体裁を装いつつ、実際には磐余彦を殺害しようと計画します。

陥落と悲劇

しかし、兄猾の企みは弟猾によって明らかになりました。弟猾は磐余彦の呼びかけに応じ、兄猾の罠を事前に報告します。磐余彦は、道臣命の命令で自ら先に罠の中に入るよう脅され、結果として兄猾が自身の作った罠にかかり、圧死してしまうことになるのです。このようにして、兄猾はあまりにも早く運命を閉じることとなりました。

兄猾の死後、彼が生きていた地域は菟田の血原と呼ばれるようになり、その名残は歴史に刻まれています。『古事記』と『日本書紀』の両方の記述によると、彼の死体は瞬時に解体され、血が大地を染めたと伝えられています。この悲劇的な結末は、兄猾が思い通りに事を運ぶことができなかったことを象徴しており、古代の人々にとっても衝撃的な出来事であったことでしょう。

雨と酒の歌

弟猾は兄猾の死後に祝勝会を開き、酒や牛肉を用意して磐余彦をもてなしました。このとき、磐余彦は『古事記』に基づいた歌を歌い、その様子は後世に伝わり、国津神の井光や磐排別といった神々とも出会うことになります。『書紀』に記載された「来目歌」は、演奏される際に特別な注釈が施されるなど、その重要性が示されています。

このように、兄猾は弟猾との関係や磐余彦との交錯により、古代日本の神話や歴史の一部として語り継がれています。彼の物語は、古代日本の文化や信仰、そして人々の運命を紡ぎ出していきます。

もう一度検索