八咫烏

八咫烏（やたがらす）

八咫烏は、日本の神話に登場する三本足のカラスで、導きの神として信仰されています。特に神武東征の際、高皇産霊尊によって神武天皇のもとに派遣され、熊野国から大和国への道案内をしたと伝えられています。その姿は一般的に三本足として知られており、古くから様々な形で描かれてきました。

概要

八咫烏は神武天皇を橿原に案内したとされ、導きの神として広く信仰されています。また、太陽の化身とも見なされています。『古事記』によれば高木大神から遣わされたとし、『日本書紀』では天照大神によって送られたと伝えられています。記紀では八咫烏が兄弟に神武天皇への帰順を求めるエピソードがありますが、兄弟からは追い返され、その後弟が神武天皇に帰順の報告をしたとされています。

八咫烏の三本足の意味には複数の解釈があります。熊野本宮大社では、三本の足は天、地、人を表すとし、彼らが同じ太陽から生まれた兄弟だと示しています。また、江戸時代には八咫烏は雑賀衆のシンボルにも用いられました。

八咫烏はまた、熊野三山においてミサキ神として信仰され、熊野大神に使える存在とされています。そのため、八咫烏は熊野のシンボルともなり、熊野の牛玉宝印などに描かれています。

三本足の意義

『古事記』と『日本書紀』には八咫烏が三本足であるという具体的な記述はありませんが、三本足を持つ八咫烏のイメージは平安時代中期の文献に見られます。この頃、八咫烏と中国の三足烏が関連付けられたと考えられています。

八咫烏の三本足は、天・地・人の調和を示すという見解があります。また、熊野地方の権力を表すとも言われています。中国では三足烏が太陽を象徴する存在とされ、朝日、昼、夕日を表す足であるとも認識されています。これにより、八咫烏の信仰の背後には、中国や朝鮮の伝説が融合した可能性が考えられています。

歴史的背景

八咫烏は神武天皇の道案内を務めた神として知られ、多くの文献でその存在と功績が記されています。具体的には、神武天皇が紀伊半島を迂回して橿原に進む際に、八咫烏が彼を導いたとされています。神話においては、八咫烏は熊野の神の使いとしても重要な役割を果たします。

八咫烏の記録は『古事記』や『日本書紀』だけでなく、様々な文化財や神社の伝承に見られます。特に、奈良県にある八咫烏神社では、建角身命を祭神として祀っています。また、戦国時代には紀伊国の雑賀衆の家紋が八咫烏であったり、近世には文学においても八咫烏が取り上げられることがありました。

シンボルとしての八咫烏

近代以降、八咫烏は多くのシンボルマークとして利用されています。特に日本サッカー協会のシンボルマークに採用され、全国的に知られる存在になりました。このデザインは、神武東征の神話に基づいており、ボールをゴールへ導く象徴としての意味が込められています。

軍事的にも大日本帝国時代から八咫烏は広く用いられ、多様な徽章や装飾に取り入れられました。さらに、熊野周辺のバス会社の社紋にも八咫烏が採用され、地域のシンボルとしても浸透しています。

八咫烏は、日本の神話や歴史に深く根ざした存在であり、現代でも多くの人々によって信仰され、シンボルとして親しまれています。

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