先天性中枢性肺胞低換気症候群

先天性中枢性肺胞低換気症候群（CCHS）

先天性中枢性肺胞低換気症候群（Congenital Central Hypoventilation Syndrome, CCHS）は、脳幹部の自律神経中枢に先天的な形成異常や機能不全があることで起こる、重篤な呼吸障害です。特に、睡眠時に呼吸不全を引き起こすことが特徴であり、「オンディーヌの呪い」という別名でも知られています。

病態

通常、生体は高二酸化炭素状態や低酸素状態を感知すると、肺に存在する化学受容器が血中の酸素濃度や二酸化炭素濃度を検知し、脳の呼吸中枢に信号を送って換気を促します。この呼吸反射は自律神経系によって制御されています。

しかし、CCHSの患者では、覚醒時にはこの生理的な呼吸機能が保たれているものの、睡眠時には呼吸機能が麻痺し、肺胞レベルでの酸素と二酸化炭素のガス交換が正常に行われなくなるため、呼吸不全に陥ります。

発症の背景には遺伝子レベルでの異常があり、中枢神経の自律神経細胞の発生に関与する転写因子遺伝子（Phox2B）の変異が確認されています。ただし、この変異は非常に稀であり、全世界での報告例は200名以下とされています。

睡眠時無呼吸症候群や乳幼児突然死症候群（SIDS）と混同されることがありますが、発症のメカニズムは全く異なります。大澤らの報告（2004年）によれば、CCHSに特異的なPhox2Bの遺伝子異常は、乳幼児突然死症候群の患者には認められませんでした。

オンディーヌの呪いについて

「オンディーヌの呪い」という別名は、水の精オンディーヌの伝説に由来します。オンディーヌは、愛する男性に裏切られたことで、呼吸などの生命維持に必要な機能を自力で行えなくなるという呪いをかけられたとされています。この伝説が、CCHSの患者が睡眠時に呼吸困難になる状況と重ね合わされ、この病気の別名として用いられるようになりました。

関連項目

呼吸中枢
自律神経系
肺胞
ガス交換
呼吸不全
遺伝子異常
ウンディーネ - オンディーヌのドイツ語名。伝説についても言及。

外部リンク

Mendelian Inheritance in Man (OMIM) #209880 先天性中枢性肺胞低換気とPHOX2B遺伝子

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