先生!口裂け女です!

『先生！口裂け女です！』

『先生！口裂け女です！』（せんせい くちさけおんなです）は、2023年に製作された日本のアクション・ホラー映画です。メガホンを取ったのはナカモトユウ監督で、俳優の木戸大聖が本作で映画初主演を務めました。

物語の概要

物語の中心となるのは、高校生タケシと友人のF1、そして千葉から転校してきたアヤカの三人組です。彼らは日常的に原付自転車を盗み出し、レッドキング率いる不良グループに売り渡して日銭を稼ぐという、少々危うい生活を送っていました。

ある日、いつものように寂れたアパートに停めてあった原付を盗もうとした三人は、思わぬ相手に遭遇します。マスクで顔を隠した不気味な女性が彼らの前に現れ、執拗に追跡してきたのです。必死にスクーターやバイクを駆って逃げる三人でしたが、その女性は驚異的な速さで追い迫ります。追いつめられたタケシは、女性がマスクを外した瞬間にその恐ろしい形相を目撃します。口が左右に大きく裂けていたのです。

どうにか逃げ延びた彼らは、その女性が昭和時代に都市伝説として恐怖を呼んだ「口裂け女」ではないかと恐れおののきます。時を同じくして、通っている高校では1年生の女子生徒が行方不明になったという知らせが入ります。タケシはこれが口裂け女の仕業ではないかと推理し、事態の解明を決意します。格闘技を習っている姉のカオリを説得し、四人となった彼らは再びアパートへと向かい、口裂け女との対決を試みます。

しかし、口裂け女は彼らの想像をはるかに超える強さでした。タケシはスクーターを返すことを約束して、その場を収めます。この遭遇を通じて、彼らは口裂け女が単なる伝説上の怪物ではなく、過去に恋人からのDVによって口を傷つけられた被害者であるという衝撃的な真実を知ることになります。さらに彼女自身も格闘技の心得があり、かつて自分を傷つけた相手に報復を果たしていたことも明らかになります。この出来事を機に、タケシは口裂け女に弟子入りし、格闘技を学ぶことを決意します。

タケシは口裂け女のために、不良グループのアジトである倉庫に忍び込み、スクーターを取り戻すことに成功します。しかし、その現場を目撃した不良グループの一味によって、翌日倉庫に呼び出され、激しい暴行を受けた上に、多額の現金を要求されてしまいます。

金策に窮したタケシは大型バイクの窃盗を企てますが、アヤカとF1からの協力を得られず、単独での実行も失敗に終わります。通報されて警察沙汰となり、父親に厳しく叱責され自宅謹慎を余儀なくされます。

謹慎中のタケシのもとにアヤカが訪れ、レッドキングがSNS上で口裂け女を女子高生誘拐事件の犯人として虚偽の情報を拡散していることを伝えます。口裂け女の疑いを晴らしたいタケシは、真犯人を探し始めることに。アヤカは、現在の担任教師サイトーが千葉にいた頃にも同様の女子高生行方不明事件が発生していたことを思い出します。サイトーへの疑念を深めたタケシは、サイトーと親しい同級生リサに連絡を取りますが、リサはサイトーと一緒に映画を見た後、現在彼の部屋にいると聞かされます。タケシはアヤカ、カオリと共にサイトーの部屋へと急ぎます。

F1も合流し、サイトーの留守中に部屋に侵入したタケシたちは、そこで行方不明になっていた女子高生の遺体と、監禁されていたリサを発見します。サイトーが部屋に戻ってきてタケシたちに気づき逃走を図るその時、タケシのスマートフォンにレッドキングからのメールが届きます。タケシの父親がレッドキングと話をつけようと倉庫に向かい、逆に捕らえられてしまったというのです。

父親を救出するため倉庫に向かったタケシとアヤカでしたが、返り討ちに遭い捕まってしまいます。絶体絶命のピンチに、F1が助けを求めて呼び出した口裂け女が現れます。口裂け女は圧倒的な強さでレッドキング率いる不良グループを壊滅させます。父親を助け出したタケシが気づいた時、口裂け女の姿はすでにありませんでした。彼女は逃走したサイトーを追跡し、殺害していたのです。口裂け女はその後、どこへともなく姿を消しました。

この一連の出来事を経て、タケシはこれまでの生き方を改め、新聞配達のアルバイトを始めるなど、まっとうな高校生活を送ることを決意します。

キャストとスタッフ

主要キャストとして、主人公タケシを木戸大聖、アヤカを黒崎レイナ、F1を上野凱が演じました。特に口裂け女役の屋敷紘子は、2023年のインタビューでこの役が自身にとって「名刺代わりになる映画」であり、「『屋敷紘子＝口裂け女』でもいい」と語るほど思い入れが深い役となりました。黒崎レイナと上野凱はオーディションを経ての配役です。その他、里々佳、和田雅成（担任教師サイトー役）、六平直政、大迫茂生らが出演しています。

監督・脚本はナカモトユウが担当し、アクション監督は川本耕史、特殊メイクデザインと特殊造形は藤原カクセイ、VFXスーパーバイザーは神谷誠がそれぞれ手掛けました。

製作と公開

ナカモトユウ監督は、本作の製作意図について、現代社会に広がる「反ルッキズム」の考え方を反映させたいという思いがあったと述べています。「口が裂けているからといって怪物扱いするのはどうなのか」という問いかけを作品に込めたとのことです。

本作は2023年7月7日に日本全国で劇場公開されました。公開翌日の7月8日には、池袋シネマ・ロサで公開記念舞台挨拶が行われ、監督のナカモトユウをはじめ、主演の木戸大聖、黒崎レイナ、上野凱、和田雅成、屋敷紘子といった主要キャストが登壇しました。

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