先発明主義

先発明主義について

先発明主義（せんはつめいしゅぎ、英語: first-to-invent principle）とは、特許権が最初に発明を行った発明者に与えられる制度のことを指します。同じ発明を行った複数の者が存在する場合、特許出願の時期にかかわらず、先にその発明を完成させた者に特許権が付与される仕組みです。この制度は特に米国で採用されています。

概要

先発明主義のメリットは次の2点です。まず、発明が特許出願に値するかどうかを事前にじっくりと評価できるため、無駄な特許出願が減少します。次に、最初に発明をした者を保護するという効果が強く、発明者にとっての権利を認めることができます。

一方で、先発明主義にはいくつかのデメリットも存在します。まず、発明日を証明するためにラボノートを常に保持する必要があり、これは研究者にとってかなりの負担となります。また、特許が成立した後に新たな発明者が現れると、権利の安定性が損なわれることがありえます。さらに、先に発明をした者を特定するための手続き、すなわちインターフェアレンスは煩雑であるため、多くの時間と手間がかかります。

採用状況

近年、先発明主義を採用する国はほとんど存在せず、特に多数の国では先願主義（最初に特許出願を行った者に特許権を与える制度）を採用しています。米国はこの制度を最後まで維持している国の一つでしたが、米国特許法には出願日から1年以上前に公知となった発明や公用されていた発明には特許を与えない規定があるため、発明者が先に発明していれば必ずしも特許を取得できるわけではありませんでした。

さらに、先発明主義は2006年から先願主義への移行が議論されるようになり、同年のジュネーヴ特許制度協議や東京の特許当局会合において先発明主義の放棄が合意されました。2011年には特許改革法（リーヒ・スミス米国発明法）が成立し、2013年3月16日より先願主義が施行されることになりました。この法改正により、今後は特許取得が出願日によって決まることになりました。

歴史的背景

先発明主義から先願主義への移行は、歴史的にも様々な国で行われてきました。以下はその一例です。

• - 1921年: 日本が先発明主義から先願主義に転換（大正10年法）
• - 1989年: カナダ
• - 1998年: フィリピン

このように、先発明主義はかつては重要な制度でしたが、現在の特許制度はより効率的かつ公平に発明者の権利を保護する方向へと進んでいることがわかります。

関連項目

• - 先願主義
• - サブマリン特許

先発明主義の考え方は、特許制度の進化に伴って変化し続けており、発明者の権利保護と制度の効率性のバランスを模索する中で重要なテーマとなっています。

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