先輪

先輪（せんりん）とは

先輪とは、機関車において動輪よりも前方に配置された、動力を持たない車輪のことです。通常、先輪は先台車と呼ばれる台車に組み込まれています。

先輪の役割

先輪には、主に以下の2つの役割があります。

曲線通過の円滑化: カーブを走行する際、先輪が線路に沿ってスムーズに動くことで、機関車全体の動きを安定させます。
運転室の支持: 特にキャブ・フォワード型蒸気機関車では、運転室を支える役割も担います。

先台車の構造

先台車は、単に回転するだけでなく、わずかな横方向への動きも許容する必要があります。これにより、機関車はカーブに沿って柔軟に走行できます。この動きを制御し、常に中心に戻ろうとする力を与えるために、スプリングなどの機構が組み込まれています。

この構造は1865年にイギリスのウィリアム・アダムスによって特許が取得されました。

先輪の歴史

先輪を初めて使用したのは、アメリカ合衆国のジョン・ジャービスだと考えられています。1832年に彼は、2軸の先輪と1軸の動輪を持つ機関車を設計しました。この車軸配置は「ジャービス」と呼ばれ、ホワイト式表記法では4-2-0、UIC式表記法では2-Aと表記されます。

高速走行と先輪

先台車を備えていない機関車は、一般的に高速走行には不向きとされています。1895年にイギリスの鉄道検査官が、車輪配置0-4-4の機関車による事故を受けて、この慣例を宣言しました。しかし、中には先台車なしで成功した例もあります。ロンドン・ブライトン・アンド・サウス・コースト鉄道のグラッドストンクラス旅客急行用機関車は、車輪配置0-4-2ながら、1933年まで問題なく運行を続けました。

1軸の先輪（ポニー台車）でも安定性は向上しますが、高速走行には2軸の先台車がほぼ必須となります。

珍しい3軸の先輪

1両の機関車に備えられた最大の先輪の数は6輪（3軸）です。これは、車輪配置6-2-0のクランプトン機関車や、車輪配置6-4-4-6のペンシルバニア鉄道S1型デュープレックス機関車、車輪配置6-8-6のS2型蒸気タービン機関車などに見られます。クランプトン機関車は1840年代に製造されましたが、その後ペンシルバニア鉄道がS1型に採用するまで、3軸の先台車はあまり一般的ではありませんでした。

まとめ

先輪は、機関車の安全かつ円滑な走行を支える重要な要素です。その構造や歴史を知ることで、鉄道技術の奥深さを感じることができます。

関連項目

蒸気機関車の構成要素
従輪

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