光電子増倍管

光電子増倍管 (PMT)

光電子増倍管、通称PMT（Photomultiplier Tube）は、光電効果を利用して光を電気信号に変換し、その信号を飛躍的に増幅する装置です。この技術により、光子が一つでも検出可能な超高感度を実現しています。PMTは、高速動作、低ノイズ、そして広い受光面積を特長とし、数多くの分野での利用が進んでいます。

用途

光電子増倍管は、分光分析、高エネルギー物理学、天文学などの学術的な研究に広く用いられているほか、医療診断（ガンマカメラやPETなど）、血液分析や環境測定、さらにはバイオテクノロジーや半導体製造、材料開発など、さまざまな実用的な分野にも応用されています。具体的には、石油探査や放射線計測といった非常に専門的な用途でも重要な役割を果たしています。なお、光電子増倍機能がない装置は、一般に光電管と呼ばれます。

構造

光電子増倍管は、高真空のガラスまたは金属容器内に複数の電極を封入した構造を持っています。主な構成要素には、光電陰極、ダイノード、陽極の3つがあり、それぞれが異なる役割を果たしています。まず、光電陰極には光が当たることで光電子が放出され、その後、ダイノードを通ることで電子が増幅されます。ダイノード間には段階的に設定された電圧が印加され、光電子が加速される仕組みになっています。

この際、光がPMTに入射する方式は、「ヘッドオン型」と「サイドオン型」に大別されます。ヘッドオン型では光が上方から入り、サイドオン型では光が側面から入ります。これにより、取り込みたい光の特性に応じてデバイスが選択可能です。

動作原理

光電子増倍管の動作原理は、光子が光電陰極で電子を叩き出すことに始まります。入射した光子のエネルギーは光電陰極に作用し、放出された光電子は集束電極によって導かれます。その後、加速電圧がかけられて第一ダイノードに衝突し、一次電子が複数の二次電子を放出します。これが次々とダイノードを通過し、それぞれのダイノード間で増幅されていくことで、最終的には数十万倍から一千万倍の信号電流が陽極に到達します。たとえば、二次電子放出比が5のダイノードを10個使用すれば、総合的なゲインは約1000万に達することもあります。

種類

光電子増倍管には、光電面や入光窓の材料を変えることで、115 nmから1700 nmまで広範な波長に感度を持たせることができます。特にバイアルカリ光電面は可視光域に対して高感度であり、シンチレーションカウンティングによる放射線計測といった用途で広く使用されています。また、マルチアルカリ光電面は、より広い波長範囲をカバーし、多くの分光光度計の中で重要な役割を果たしています。

近年では、MEMS技術を利用した新しいコンパクトなモデルも登場しており、可搬式爆発物探知機のように、より小型で軽量、低消費電力の製品が多くの場面で活用されています。

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