児島文

児島 文

児島 文（こじま ふみ）は、日本の陸上競技界において、優れた選手であると同時に情熱的な指導者としても多大な貢献を果たした人物です。旧姓をフミといい、1916年12月17日に鹿児島県肝属郡高山町（現在の肝付町）に生を受けました。その生涯は、選手としての輝かしい記録と、後進の育成に捧げた情熱に彩られ、1996年6月7日に幕を閉じました。

中京高等女学校（現在の至学館大学）の家事体操専攻科で学びを深めた後、児島は教育者としてのキャリアをスタートさせます。鳥栖高等女学校（現在の佐賀県立香楠中学校・鳥栖高等学校）や鹿児島第一高等女学校（現在の鹿児島県立鶴丸高等学校）で教鞭を執りながら、自身の陸上競技者としての才能を開花させていきました。

特に投てき種目において、彼女は目覚ましい活躍を見せます。1934年6月には、女子砲丸投で10メートル84センチという驚異的な記録を樹立し、当時の日本新記録を更新しました。これを皮切りに、円盤投や砲丸投のトップ選手として日本の陸上界を牽引します。その実力が認められ、1936年に開催されたベルリンオリンピックでは、女子円盤投の日本代表として世界の舞台に立ちました。第二次世界大戦による混乱期を経て競技活動が再開されると、1951年にニューデリーで開催された第1回アジア競技大会に出場。円盤投と砲丸投の二種目で見事銀メダルを獲得し、国際舞台でもその力を示しました。

現役引退後、児島文は選手として培った経験と知識を活かし、陸上競技の指導者として新たな道を歩み始めます。特に九州地方を中心に、多くの若手選手の育成に尽力しました。その指導は、単に技術を教えるだけでなく、選手の人間的な成長を促す温かいものであったと言われています。

指導者としての活動に加え、彼女は陸上競技の普及と発展のため、様々な立場で貢献しました。南日本新聞社のスポーツ担当記者として、競技の魅力を多くの人々に伝えました。また、教育機関においてもその才能を発揮し、愛知県立女子短期大学や鹿児島経済大学（現在の鹿児島国際大学）で教授を務め、体育教育の分野で後進の育成に努めました。さらに、鹿児島県陸上競技協会の理事長を務めるなど、競技団体の運営にも深く関与し、地域における陸上競技の振興に尽力しました。

児島文は、選手として日本記録樹立やオリンピック・アジア大会での活躍を通じて日本の陸上競技史にその名を刻む一方、引退後は教育者、ジャーナリスト、そして競技団体役員として、多角的な視点から陸上競技の発展に貢献しました。その情熱と貢献は、後世に多大な影響を与えています。

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