児童保護サービス

米国児童保護サービス（CPS）

定義と役割

アメリカ合衆国において、児童保護サービス（Child Protective Services, CPS）は、各州に設置された政府機関であり、児童虐待や育児放棄に関する通報を受け付け、対応する責務を担っています。州によっては、より家族支援に重点を置いた名称で運営されることもあり、例えば児童家庭サービス（Department of Children & Family Services, DCFS）や、より広範なソーシャルサービス（Department of Social Services）の一部として活動している場合もあります。これらの機関の主要な目的は、危険な状況にある子供たちを特定し、その安全を確保するための適切な措置を講じることです。

法的根拠

CPSの活動は、主に連邦レベルで定められた複数の法律に基づいて実施されています。その中心となる法律の一つに、児童虐待防止及び対処措置法（Child Abuse Prevention and Treatment Act、CAPTA）があります。この他にも、先住民族の子供たちの福祉に関するIndian Child Welfare Act (ICWA)、様々な出自を持つ子供たちの養子縁組機会均等を目指すMulti-Ethnic Placement Act (MEPA)、養子縁組を促進し子供たちの安全な家庭生活を確保するAdoption and Safe Families Act (ASFA)などが関連します。さらに、市民の権利保護に関する42 U.S.C. Section 1983、および状況によっては1985といった連邦法も、CPSの権限や活動に影響を与えることがあります。

通報制度

米国では、多くの州で、児童が虐待や放置を受けていることを認識した、またはそう推測するに足る合理的な理由がある市民に対し、それをCPSなどの関係機関に通報することを義務付けています。CPSは、通報が必要かどうかを判断するための詳細なガイドラインを一般に公開しており、市民や専門職が適切な行動をとるための指針を提供しています。

活動実態と統計

CPSには年間数多くの通報が寄せられ、その対応にあたっています。児童家庭局が公表した過去の統計データからは、その活動規模と児童虐待・放棄の深刻な実態がうかがえます。

たとえば、2004年には全国でおよそ350万人の児童が虐待や放棄の疑いで調査対象となり、そのうち推定87万2千人の児童が実際に被害を受けていたと報告されています。さらに悲劇的なことに、虐待や放棄により命を落とす子供たちもおり、2004年には推定1490人、2007年には1760人が死亡しました。犠牲者の多くは幼い子供たちであり、死亡ケースの76%が5歳以下でした。2008年のデータでは、児童1000人あたり8.3人が虐待や放棄の被害者になったことが示されています。

CPSは、虐待や放棄の被害を受けた児童への支援も行います。2010年には、約40万人の児童が里親制度などの支援を受けており、そのうち36%が5歳以下の子供でした。同年には約12万人の5歳以下の児童が新たに里親制度の支援を受け始めた一方で、支援を終えたのは10万人以下でした。

CPSへの通報件数は非常に多く、2009年には年間250万件の通報があり、そのうち61.9%が本格的な捜査対象となりました。また、一度通報された児童が再び虐待を受ける再虐待も課題であり、国家データに基づく研究では、児童の22%が2年以内に再度通報され、そのうち7%については再虐待が事実であったことが確認されています。

データ収集と再虐待の状況

米国における児童虐待および放棄に関する統計データは、主に以下の三つの主要なシステムによって収集・分析されています。

1. National Child Abuse and Neglect Data System (NCANDS): 1974年に開始されたこのシステムは、CPSが捜査を行った全ての虐待・放棄疑い通報に関する包括的なデータを含んでいます。
2. National Survey of Child and Adolescent Well-Being (NSCAW): 1996年から運用され、NCANDSと同様にCPSが関与した通報を対象としますが、児童とその家族の関係に関するより詳細な臨床的評価データも収集しています。
3. National Incidence Study (NIS): 1974年に始まり、CPSのデータに加え、地方メディアの情報なども活用することで、虐待・放棄事件全体の発生状況をより広範に把握することを目指しています。

これらのシステムから得られる統計情報は、児童保護の現状を理解し、効果的な政策や介入策を検討する上で貴重ですが、再虐待のような複雑な問題の全体像を完全に捉えるにはそれぞれのデータ収集方法による限界も考慮する必要があります。

米国児童保護サービス（CPS）は、子供たちの権利と安全を守るための不可欠な機関であり、その活動は複雑かつ多岐にわたります。

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