入谷豊州

入谷 豊州：海運業界の革新者

入谷 豊州（いりたに とよくに、1903年6月23日 - 1984年12月4日）は、日本の海運業界において重要な役割を果たした実業家です。香川県木田郡奥鹿村に生まれ、農家の長男として育つ。スムーズな経歴ではなく、彼の人生は数々の挑戦と転機に満ちています。

生い立ちと初期のキャリア

豊州は、6人兄弟の長男として鹿庭町の農家で育ち、幼少期には豊という名前で知られていました。祖父は材木商で、家業を継ぐことが期待されていましたが、彼は高等小学校を卒業した後、家業に入りたくなくなり、下関にいる叔母を頼りにします。しかし、父親の説得を受けて帰郷し、地元の養蚕伝習所で2年間研修を受けました。18歳で養蚕の巡回指導員となり、青年団の団長も担いましたが、担当した農家が蚕の病気で全滅し、その責任を感じて辞職。

その後、岡山県で新たなスタートを切ります。1923年に中国高等経理学校に入学し、経理を学びました。卒業後は経理事務職を経て、畳表会社に就職。複式簿記を取り入れましたが、煩雑さから悩むことになります。再度香川県に戻ってからは愛国貯蓄銀行高松支店に転職しますが、飲酒が影響し借金を抱えてしまいます。その後、神戸市にある加藤海運の経理主任に転職し、海運業界に足を踏み入れることとなります。

海運業界での成功

1926年に加藤海運に入社。彼は会計の簡略化を進め、出世を果たします。神戸から高松だけでなく、更なる事業拡大を提言し、1932年には尾道支店の支店長に就任。その後も多くの支店を開設し、業績を向上させていきました。

1937年、彼は加藤海運から独立し合資会社「加藤海運商会」を設立。下関を拠点に、中国市場への事業拡大を見据えました。自社の船は持たず、配船手数料での収益に頼る形でスタートしましたが、1939年には初の木造船を建造し、事業を遂行しました。戦況が厳しくなる中でも、彼は自らのノウハウを駆使し、関門海峡周辺の回船業者の中で3位の規模にまで成長させました。

戦後の事業拡大と功績

太平洋戦争終戦後、入谷は造船所の建設機材処理に奔走しつつ、関門機帆船運送の後身となる組織の理事長に就任しました。1947年には「三聯商会」を設立し経営の多角化を図るとともに、1948年には「関光海運」を設立。150トンの徴用機帆船を取得し、北九州への石炭などの運送に乗り出しました。1953年には鋼船「糖油丸」を建造し、阪神地区との定期輸送を開始します。

さらに、1965年には「阪九フェリー」を設立し、神戸から小倉港への長距離フェリー航路を開設しました。その後も関釜フェリー、新日本海フェリー、東九フェリーなどを設立し、フェリー事業を拡大し続けました。その結果、彼の会社は日本最大のフェリー事業グループ「SHKグループ」を形成するに至ります。

晩年と評価

入谷はその功績が評価され、1966年に紺綬褒章、1970年には藍綬褒章、1977年には勲四等旭日章を受章しました。晩年も精力的に活動し、週6日出社していましたが、1984年に肝不全で他界しました。その後、SHKグループの客船「ゆうとぴあ」で合同社葬が行われ、多くの人々に惜しまれました。

入谷豊州の生涯は、海運業界の発展だけでなく、挑戦する精神と革新を追求する姿勢の象徴でもあります。

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