全インド・ムスリム連盟

全インド・ムスリム連盟：パキスタン建国への道とその後

全インド・ムスリム連盟は、インド亜大陸におけるイスラム教徒の権利と利益を守ることを目的として設立された政党です。20世紀初頭のインドは、イギリスによる植民地支配下で、インド国民会議が反英運動を展開する中、宗教対立という新たな要素が政治情勢に大きな影を落としました。

連盟の誕生と初期の活動

1905年のベンガル分割令は、イギリスによる巧妙な策略でした。ベンガル地方をヒンドゥー教徒中心の西ベンガルとイスラム教徒中心の東ベンガルに分割することで、反英運動を宗教間の対立にすり替えようとしたのです。この政策は、インド国民会議を激昂させましたが、東ベンガルにおけるイスラム教徒の優位性を生み出し、一部のイスラム教徒の親英感情を強めました。この状況を背景に、1906年、アーガー・ハーン3世を筆頭とした指導者たちによって、全インド・ムスリム連盟が結成されました。

翌1907年には、連盟の三大綱領が採択されました。イギリスへの忠誠、ムスリムの利益の保護、そして他教徒との協力という内容でした。この綱領は、初期の連盟がイギリスとの協調路線をとっていたことを示しています。しかし、1911年にベンガル分割令が撤回されると、連盟とイギリスの関係は悪化。第一次世界大戦中のオスマン帝国との開戦をきっかけに、連盟は親英路線から転換し、インド自治政府の樹立を目標に掲げるようになりました。アリー兄弟やムハンマド・アリー・ジンナーといった若き指導者たちが台頭し、連盟はより急進的な組織へと変貌を遂げました。1916年には、インド国民会議とラクナウ協定を結び、自治達成に向けて協力関係を築きました。

パキスタン独立への道

第一次世界大戦後、インドの独立運動は活発化し、ガンジーの指導の下、1937年には州自治が実現しました。しかし、国民会議との政策対立は深まり、連盟は次第に独立路線を強めていきます。そして1940年、ラホール大会において、ムスリムの多い地域を独立国家「パキスタン」として分離するという歴史的決議が採択されました。この決議は、その後、マウントバッテン卿によるインド・パキスタン分割計画によって現実のものとなり、1947年、インドとパキスタンは独立を果たしました。ムスリム連盟の目的は達成されたかに見えました。

パキスタン独立後の連盟と衰退

パキスタン独立後、全インド・ムスリム連盟はパキスタンを支配する政党となりましたが、一党独裁体制を敷いたことで国民からの支持を失っていきました。多くの有力政治家がインドからの移民（ムハージル）であったこと、そしてジンナーの死、その後継者であるリアカット・アリー・カーンの暗殺など、内部分裂や政情不安が連盟の衰退を加速させました。1958年の軍事クーデターにより、連盟は活動を停止。1962年にパキスタン・ムスリム連盟として再編され、政界に復帰しましたが、かつての勢いは失われました。

まとめ

全インド・ムスリム連盟は、イギリスの植民地政策、インド国民会議との対立、そして宗教的・政治的複雑な状況の中で生まれた政党です。パキスタン建国という大きな歴史的役割を果たした一方で、独立後の一党独裁体制や内部分裂により衰退していったという複雑な歴史を持っています。その歴史は、インド・パキスタンの複雑な関係を理解する上で重要な鍵となります。

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