全国中等学校優勝野球甲信越大会

この項目では、戦前期に実施された全国中等学校優勝野球大会の地方予選として、甲信大会および甲信越大会について解説します。甲信大会は1918年（第4回大会）から1922年（第8回大会）にかけて山梨県と長野県を範囲とし、その後1923年（第9回大会）から1930年（第16回大会）まで山梨・長野・新潟の三県に拡大された甲信越大会へと発展しました。

これらの大会が編成される前、長野県と新潟県の学校は1916年（第2回大会）から北陸大会に参加していました。1918年の第4回大会において山梨県勢が初めて全国大会予選に参加するのに合わせ、山梨・長野両県を対象とする甲信大会が新たに設けられました。しかし、山梨県勢は1919年（第5回大会）から1923年（第9回大会）にかけて大会に参加せず、この間の甲信大会は5回すべてで長野県校が優勝を飾っています。

北陸大会の参加校が増加したことを受け、地方大会の構成が見直されました。その結果、1923年の第9回大会からは、甲信大会の範囲に新潟県が加わり、新たに山梨・長野・新潟の三県を対象とする甲信越大会として再編されました。

この再編初年度である1923年、長野県では中等学校野球が長野市と松本市の間に存在する根深い感情的な対立の舞台となっていました。この状況を問題視した長野県立中等学校長会は、県立学校の大会参加を禁止するという異例の措置を取りました。これにより、この年の大会に長野県から参加できたのは、私立の松本商業学校のみでした。長野県内では、県庁所在地である長野市を中心とする東北信地方と、松本市を中心とする中南信地方との間で長年にわたり対立が続いていました。野球の試合においても、長野の学校が松本で試合をすれば「勝ったら生きて長野へは帰さないぞ」といった脅迫まがいの手紙が届いたり、反対に松本の学校が長野で試合をすれば「くやしかったら県庁を背負って帰れ」といった悪質な野次が飛び交ったりするほどでした。

長野県の県立学校に対する大会参加禁止措置が解除されたのは、甲信越大会が消滅した後の1931年（第17回大会）からです。そのため、甲信越大会が開催されていた時期に長野県から参加できたのは、私立校である松本商業学校や、県立であっても中学校ではなく実業学校に分類される長野商業学校や諏訪蚕糸学校などに限られていました。このような状況にもかかわらず、甲信越大会が実施された8回のうち、優勝は長野県勢が6回、新潟県勢が2回であり、山梨県勢は一度も優勝できませんでした。この結果からも、長野県勢の、特に参加を許された学校の強さが際立っていたことがわかります。中でも松本商業学校は、1928年の第14回大会で全国優勝を達成するという輝かしい実績を残しています。

1931年の第17回大会を迎えるにあたり、全国大会の地方予選は再び再編されました。これにより、山梨県は神奈川県、静岡県とともに甲神静大会に、長野県と新潟県は信越大会にそれぞれ編成され、甲信越大会はその歴史に幕を閉じました。

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