全国都市対抗サッカー選手権大会

全国都市対抗サッカー選手権大会（ぜんこくとしたいこうサッカーせんしゅけんたいかい）は、かつて日本において開催されていた、社会人サッカーチーム日本一を決定する全国規模のトーナメント大会です。

大会概要

この大会は、1955年から1964年にかけて毎年夏に開催されました。主な舞台は東京都内の後楽園競輪場や後楽園球場など、当時としては大規模な施設でした。主催は日本蹴球協会（現在の日本サッカー協会）であり、読売新聞社と報知新聞社が後援として名を連ねていました。全国から予選を勝ち抜いた社会人チームが一堂に会し、ノックアウト方式で優勝を争いました。

当時の位置づけ

日本サッカーリーグ（JSL）が創設される以前の時代、本大会は国内の主要なサッカー大会の一つとして非常に高い位置づけにありました。特に、天皇杯全日本サッカー選手権大会や全日本実業団サッカー選手権大会と並ぶ、社会人サッカー界における三大権威大会と認識されていました。全日本実業団選手権がその名の通り実業団チームのみを対象としていたのに対し、この都市対抗大会は、企業に属する実業団チームだけでなく、地域に根ざした社会人クラブチームにも参加資格があった点が大きな特徴でした。このため、各地の有力なクラブチームにとって、全国の舞台で実力を示し、頂点を目指すための大きな目標となっていました。全国の強豪が一堂に会することで、レベルの高い試合が展開され、当時の日本のサッカー水準向上にも寄与したと考えられます。

特徴的なルールと形式

本大会には、いくつかの特徴的な側面がありました。まず、試合時間は現在一般的となっている90分ではなく、当時の日本の国内大会でよく見られた70分で行われていました。また、当時としては非常に珍しく、多くの試合が夜間に行われるナイター形式を採用していました。これは、観客動員を図る上で効果的な試みだったと考えられます。さらに、他のチームから選手を「補強」して大会に臨むことが認められていた点も、他の主要大会には見られない特筆すべき特徴です。

この補強制度は、「都市対抗」という大会名にふさわしく、都市や地域を代表するチームとしての性格を強めるために設けられていたのかもしれません。この制度を活用し、一部の実業団チームは、自チームを主体としつつ地域の有力選手を受け入れて「クラブチーム」として大会に参加する例が見られました。代表的な例としては、日本軽金属サッカー部を母体とし、静岡地域の有力選手を加えた清水サッカークラブなどがあります。また、企業グループ内で複数のチームが合同し、「全三菱」（新三菱重工の選手を含む）のように連合チームを結成するケースもありました。1961年に全日本実業団選手権、天皇杯、そして本大会という「実業団三冠」を達成した強豪、古河電工も、新三菱重工の選手を補強して大会に臨んでいました。このように、他チームからの補強選手が大会の行方を左右することも少なくありませんでした。

大会の終焉と後継

短期間ながらも日本の社会人サッカーを牽引した本大会ですが、1964年に開催された第10回大会を最後に、全日本実業団選手権と共にその歴史に幕を下ろしました。これらの大会は、翌1965年に創設された日本初の全国規模サッカーリーグである日本サッカーリーグ（JSL）と、新たに社会人チームの頂点を決める大会として始まった全国社会人サッカー選手権大会へと発展的に引き継がれました。都市対抗という名称や独自の補強制度は姿を消しましたが、本大会が培った社会人サッカーの基盤は、JSL以降の日本のサッカー、そして現在のJリーグに至るプロサッカーの発展へと繋がっていくことになります。日本のサッカー史において、プロ化以前の重要な一時期を彩った大会として、その存在は記憶されています。

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