全国高等学校野球選手権紀和大会

紀和大会

紀和大会は、全国中等学校優勝野球大会およびその後継である全国高等学校野球選手権大会の地方大会として、1916年（第2回）から1977年（第59回）までの長きにわたり開催されました。この大会は、奈良県と和歌山県を対象エリアとし、両県から全国大会へ出場できる唯一の代表校を決める重要な予選でした。第二次世界大戦中の開催中断や、戦時下で府県単位の大会となった1941年、そして一府県一代表が認められた記念大会（1958年、1963年、1968年、1973年）を除き、通算で53回実施されました。

大会名の「紀和」は、和歌山県の大部分を占める紀伊国（紀州）と、ほぼ奈良県と一致する大和国（和州）に由来しており、その名の通り、対象となる県の変更が一度もなかった点が特徴です。これは、対象県が複数回変更された北陸大会など、他の複数府県による地方大会とは異なる点です。

大会の起源は1915年の第1回全国中等学校優勝野球大会で行われた関西大会に遡ります。この時は奈良、和歌山、大阪の三府県が対象で、和歌山中（現・桐蔭高校）が優勝しました。翌1916年の第2回大会からは、紀和大会と大阪大会に分割されます。しかし、最初の2年間は奈良県からの参加校がなく、奈良県勢が初めて紀和大会に出場したのは1917年の第3回大会からでした。

大会の主な会場としては、奈良県の橿原球場や和歌山県の紀三井寺球場などが持ち回りで使用され、両県の高校球児たちはこれらのグラウンドで全国大会への切符をかけて熱戦を繰り広げました。

大会の勢力図は、時期によって大きく変動しました。大会初期から中期にかけて、和歌山県勢は圧倒的な強さを誇りました。1957年の第39回大会終了時点までに、和歌山県勢が35回、奈良県勢がわずか2回の優勝を飾っています。中でも特筆すべきは、和歌山中（現・桐蔭高校）による14年連続優勝という偉業です。これは関西大会時代を含めた記録であり、現在も全国大会における同一校の最多連続出場記録として燦然と輝いています。大会の基本的な形式は、奈良県と和歌山県それぞれの予選を勝ち抜いた代表校同士が決勝を戦うというものでしたが、例外的な形式も存在しました。例えば、1922年および1924年から1931年にかけては県予選が行われず、直接出場校が決定されました。また、1957年の第39回大会では、両県予選の上位2校ずつ、計4校による準決勝方式が採用されました。これらの形式変更や、初期に奈良県勢の参加が少なかったことなどもあり、決勝戦が和歌山県勢同士の対戦となるケースが過去9回ありました。

しかし、1959年の第41回大会以降、奈良県勢の勢力図は大きく変わります。天理高校の台頭や郡山高校の復活などにより、奈良県勢の優勝回数が劇的に増加。この時期（1959年〜1977年）の優勝は奈良県勢が12回に対し、和歌山県勢は4回となり、両県の力関係は逆転しました。

紀和大会は1977年の第59回大会をもってその歴史に幕を閉じました。大会消滅後、記念大会として実施されていた奈良大会と和歌山大会が、1979年の第61回大会から毎年開催されるようになり、両県はそれぞれ単独で全国大会への代表校を決定するようになりました。

紀和大会は消滅しましたが、全国の舞台で奈良と和歌山の高校が対戦する機会はその後もありました。特に印象深いのは、互いに「智弁」を冠する智弁和歌山高校と智弁学園高校の対戦です。2002年の第84回大会3回戦では智弁和歌山が勝利を収め、そして2021年の第103回大会決勝では、再び智弁和歌山が智弁学園を下し、21年ぶり3回目の全国制覇を達成しました。これらはいずれも智弁和歌山が勝利していますが、興味深いことに、智弁和歌山高校は紀和大会が終了した後の1979年に創部されており、紀和大会には出場していません。また、春の選抜大会でも、紀和大会最後の年となった1977年の第49回大会準決勝で、和歌山の箕島高校が奈良の智弁学園高校を破る対戦がありました。これらの対戦は、紀和大会で育まれた両県の高校野球の伝統が、大会消滅後も全国の舞台で受け継がれていることを示しています。

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