全地形対応車

全地形対応車（ATV）とは

全地形対応車、略してATV（All Terrain Vehicle）は低圧タイヤを使用し、未舗装地やさまざまな地形を走行できる原動機付き車両です。アメリカでは特に、全幅50インチ以下、重量600ポンド以下の範囲で設計された車両として規定されています。日本では「バギー」や「四輪バギー」と呼ばれ、特に四輪のモデルが主流です。一部モデルはステアリングホイールやアクセル/ブレーキペダルを備え、サイド・バイ・サイド・ビークル（S×S）と分類されます。

構造と操作性

ATVは三輪以上のタイヤを持ち、一般的には一名または前後二名の乗車が可能です。その構造はオートバイと似ており、ハンドルやシートの配置が類似しています。運転姿勢もオートバイに近く、特に二輪統括団体のFIMでも扱われていますが、動力伝達方式やアクセル操作が異なり、親指トリガー式が一般的です。また、大型モデルにはパワーステアリングがつくこともあります。変速機に関しては、ペダル式やハンドレバー式があり、多くの機種がCVT（無段変速機）を採用しています。

ATVは大きくスポーツ型とユーティリティ型の二つに分かれます。元々は性能を重視したスポーツ型からスタートしましたが、現在はユーティリティ型の人気が高まっています。スポーツ型はモトクロスやラリーレイドなどの競技に使用され、ユーティリティ型は農業や軍事目的に広く利用されています。ユーティリティ型には豊富な荷台を持つモデルや水陸両用の特殊な構造のものもあり、さまざまな用途に対応した設計となっています。

実用性と安全性

ATVは特に安定性が高く、未経験者でも操作しやすい利点があります。旋回性能や荷物の運搬能力に優れ、雪上でも走行可能です。しかし、過信により負傷するリスクがあり、事故が発生した際は衝突時の衝撃が大きいです。米国では、私有地での運転には特に資格は不要とされているケースが多く、16歳未満の子供でも運転できる州がありますが、ドイツでは公道以外での運行が厳しく制限されています。

歴史的背景

1959年、ジャック・レンペルが発表した六輪の水陸両用車がATVの始まりとされています。その後、1967年には米国向けにホンダが三輪のオフロード車両を開発し、人気を博しました。1980年代に入ると四輪ATVの多様性が増し、一部製品は特に競技用としてレースイベントに取り入れられましたが、運転技術の不足が事故を引き起こし、安全基準の強化が求められました。三輪ATVは1987年をもって製造が終了し、四輪タイプへの移行が進みます。

日本におけるATVの法規

日本では道路運送車両法に基づき、特定の保安基準をクリアしたATVのみが合法的に公道で走行可能です。特に排気量が50ccを超えるモデルは自動車として認識され、厳しい規則に従う必要があります。しかし、現行の規制では50cc以下のATVが主に流通しており、輸入車の大部分がこのカテゴリーに含まれます。主要な製造業者は日本国内外に数多く存在し、特に若年層向けのモデルが製作されています。

ATVは、非常に多様性のある車両であり、軍事装甲車両やバギーカー等、多角的な用途に使用されることが多いため、ATVという言葉の定義は広範囲にわたります。そのため、UTVと呼ばれるサイド・バイ・サイド・ビークルとの混同も起こりやすく、段階的な理解が必要です。

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