全日空小牧空港衝突事故

全日空小牧空港衝突事故

1960年3月16日、名古屋空港（現在の名古屋飛行場）で全日空機と航空自衛隊機が衝突する航空事故が発生しました。この事故は、管制官の誤った指示と、自衛隊機パイロットの前方不注意が重なり、悲惨な結果を招きました。

事故の概要

全日本空輸25便（ダグラスDC-3、機体記号JA5018）は、東京国際空港から名古屋空港へ向かっていました。乗員3名、乗客30名の計33名を乗せた25便は、午後7時38分に名古屋空港に着陸しました。着陸後、25便は滑走路から中央誘導路へ向かうため、滑走路を走行していました。

本来であれば、滑走路を左折してターミナルビルへ向かうはずでしたが、管制官は25便が滑走路の中央部にいると誤認し、Uターンを指示しました。機長は管制官の指示に従い、滑走路を南側へ向けて走行を開始しました。

その時、管制官は離陸しようとしていた航空自衛隊第3航空団所属のF-86D戦闘機（シリアルナンバー94-8137）に対し、25便が滑走路から退避したことを確認しないまま、離陸許可を出してしまいました。自衛隊機のパイロットも、旅客機が接近しているとは認識しないまま離陸滑走を開始。これにより、両機は接近、衝突を避けられない状況に陥りました。

25便のパイロットは、自衛隊機が向かってくることに気づき、左に回避しようとしましたが間に合わず、午後7時39分頃、自衛隊機が旅客機の右主翼に衝突しました。さらに、自衛隊機は25便の後部胴体と尾翼にも衝突し、25便の胴体は分断、大破しました。

この事故により、全日空25便に搭乗していた客室乗務員1名（当時23歳）と、乗客2名（30歳と27歳の夫婦）の計3名が犠牲となり、乗客8名が負傷しました。一方、自衛隊機は衝突地点から150メートル滑走して滑走路西側に逸脱、炎上しました。自衛隊機のパイロットは、空港内の整備場にいたエンジニアたちによって救助されました。

事故原因

事故の原因は、当時業務に就いていた管制官（当時29歳）が、25便が滑走中にもかかわらず、自衛隊機に対して離陸許可を急いで出したことと断定されました。管制官は航空法違反と業務上過失致死傷罪で起訴され、名古屋地方裁判所は1962年10月10日に禁錮1年（執行猶予3年）の有罪判決を言い渡しました。

刑事裁判では管制官の過失が認められましたが、それ以前の1960年12月13日に運輸省航空局の労働組合は、自衛隊機のパイロットにも、滑走路を走行していた旅客機の両翼にある航空灯を確認できたはずだとして、前方不注意の過失があったとして、名古屋地方検察庁に告訴しました。しかし、これは起訴猶予処分となり、責任は問われませんでした。また、25便のパイロットは管制官の指示に忠実であったため、事故の責任はないとされています。

この事故の背景には、当空港が自衛隊と民間航空機が共用する官民共用飛行場であったことも指摘されています。官民共用であるために、管制体制や情報共有が複雑になり、結果として事故を招いた要因の一つと考えられています。

参考文献

特定非営利活動法人災害情報センター編『鉄道・航空機事故全史』 日外選書Fontana シリーズ　2007年

外部リンク

第34回国会 参議院 運輸委員会 第8号 昭和35年3月17日（PDF） - 国会会議録検索システム
* 日本におけるダグラスDC-3　事故機の画像や経歴など

この事故は、管制官の指示ミスと自衛隊機パイロットの前方不注意が重なったことで発生した悲劇です。また、官民共用飛行場の運用における課題も浮き彫りにしました。この事故を教訓に、二度とこのような悲劇が繰り返されないよう、安全対策の徹底が求められています。

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