全米劇場所有者協会

全米劇場所有者協会（NATO）について

全米劇場所有者協会（National Association of Theatre Owners、略称：NATO）は、アメリカ合衆国に拠点を置く映画館オーナーの業界団体です。世界的な大手映画館チェーンから、数多くの独立系映画館運営会社までが加盟しており、その影響力は非常に大きいものとなっています。

概要

NATOの会員映画館は、全米50州で35,000以上のスクリーン、そして世界100カ国以上で33,000以上のスクリーンを運営しています。これは、世界中の映画館の多くがNATOの影響下にあることを示しています。

NATOは、1965年にTheater Owners of AmericaとAllied States Association of Motion Picture Exhibitorsという二つの主要な映画館業界団体が合併して設立されました。業界誌として長い歴史を持つ「Boxoffice」を発行しており、2001年から2007年までは「In Focus」も発行していました。

歴史

映画産業が発展するにつれて、映画製作会社は統合を進め、配給をコントロールするようになりました。1917年、大手映画製作会社であったフェイマス・プレイヤーズ＝ラスキーが、後に合併するパラマウントとブロック・ブッキングを開始。これにより、映画館は質の低い作品も購入せざるを得なくなり、より良い条件での上映権を求めて劇場が団結する動きが生まれました。その結果、大手26社によるファースト・ナショナル・エグジビターズ・サーキットが設立され、後のファースト・ナショナル・ピクチャーズへと発展しました。

1921年頃には、パラマウントが300もの映画館を所有し、他の製作会社も追随。スタジオは系列チェーンでの先行上映を契約し、独立系映画会社に作品を売り渡すことを強要しました。

1921年、NATOの前身となるMotion Picture Theater Owners of America（MPTOA）が設立され、その後、Allied States Association of Motion Picture Exhibitors（Allied）などの団体が設立されました。MPTOAは加盟劇場を増やし、最大の団体へと成長しました。

第二次世界大戦中、多くの劇場が戦争活動委員会に参加。戦後は劇場活動委員会を経て、アメリカ劇場協会（ATA）へと組織名を変更。パラマウント独禁法違反事件で連邦政府側を強く支持しました。当時、スタジオ側を支持するMPTOAとの合併計画がありましたが、ATAの姿勢に反発した系列劇場の脱退や、Alliedの系列劇場加盟拒否など、軋轢が生じました。1947年には、LoewsやRKO、ワーナー・ブラザースの系列を除いて合併が行われ、約10,000の映画館が加盟するシアター・オーナーズ・オブ・アメリカ（TOA）が誕生しました。

1948年のパラマウント裁判の判決後、映画製作会社と映画館が分割され、多くの旧系列劇場はTOAかAlliedに加入しました。戦後、映画レンタル料の高騰やテレビの普及により映画館の収入は減少し、特に郊外への人口流出の影響を受けた都心部では、多くの映画館が閉鎖されました。

1966年、TOAとAlliedは合併し、全米劇場所有者協会（NATO）が誕生しました。

1970年代はNATOにとって厳しい時代でした。大ヒット作『ゴッドファーザー』で入場者数と収益は回復したものの、NATOに対抗するNITEが結成され、ガバナンス改革を迫られました。改革が行き詰まると、カリフォルニア州とイリノイ州の支部が脱退し、多くの小規模チェーンも脱退しました。1980年以降、ワシントンに専任の社長とロビイストを置き、本部をロサンゼルスに移すなど、改革が実施されました。その後、NITEがNATOに合流し、統一的な組織となりました。

1980年代には、独占禁止法の規制が緩和され、配給会社や大手コングロマリットによる映画館チェーンの買収が行われました。その結果、上位10社が業界の55％を支配するまでに至りました。1990年代には劇場の数が増加し、1999年には映画館のスクリーン数が36,448に達し、その大半がNATOの会員でした。

イベント

NATOは、映画業界関係者向けのイベントとして、ShoWest & CinemaConを開催しています。

その他、Nielsen Mediaが主催するCineEurope（バルセロナ）、CineAsia（東南アジア）、ShowEast（アメリカ合衆国南東部）などのイベントも存在します。

アメリカン・ムービー・アワード

1980年、NATOはアメリカン・ムービー・アワードを創設しました。劇場利用者の投票で受賞者を決定する点が特徴でしたが、法的問題や他の授賞式との競合により、1982年で廃止されました。

ナショナルシネマデー

2022年、NATOの非営利部門であるシネマ財団は、9月3日を「ナショナルシネマデー」と制定し、3,000以上の映画館でUS$3での上映を行いました。

アメリカ合衆国の平均映画チケット価格

NATOは、毎年4月に年間平均映画チケット価格を公表していましたが、Covidによる劇場閉鎖の影響で高止まりとなり、以降は公表を取り止めました。2022年の興行収入は2019年の66％程度、観客動員数は2019年の55％程度でした。IndieWireは、AMCシアターズの資料に基づき、2022年の平均映画チケット価格は20％上昇し、11ドルになっていると結論付けました。

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