八女提灯

八女提灯：福岡県八女市の伝統工芸

八女提灯（やめちょうちん）は、福岡県八女市で製造されている伝統的な提灯です。かつては八女郡福島町で生まれたことから福島提灯と呼ばれていました。

八女提灯の種類

八女提灯は盆提灯がメインで、住吉提灯、大内行灯、御天丸(御殿丸)、博多長、門提灯など、様々な種類があります。

住吉提灯
大内行灯
御天丸(御殿丸)
博多長
* 門提灯

現在の大半の提灯の構造である、一本の骨を螺旋状に巻く技法は、八女提灯が起源とされています。

歴史

創製

八女提灯は、文化年間(1813年頃)に福島町の荒巻文右衛門によって創製されたと伝えられています。
当初、文右衛門が創製した[提灯]]は場提灯]と呼ばれ、[墓地]]などに吊り下げて使用するものでした。山茶花や牡丹などを単色で描いた素朴なもので、これが福島[[提灯]の起源です。

場提灯は、素朴ながらも他に類を見ないものだったため、売れ行きは比較的良好でした。そのため、同地方の人々が副業として携わるようになり、筑後地方一円の需要に応えるようになりました。さらに、その一部は博多に送られ、九州北部の沿岸地方や九州沿岸の各島に転売されました。
福島提灯は、中元魂祭に供する仏壇用のものが多かったため、盆提灯の産地として名声を博しました。

吉永太平の改良

安政年間(1854～59年頃)に入ると、吉永太平という人物が意匠を凝らし、盆提灯に一大革命を起こしました。
提灯の骨に使う竹を細く裂いて一本に繋げ、螺旋状に巻く「一条螺旋式」を考案し、典具帖紙に類似した薄紙を用いて内部がほのかに透けるようにしました。そして、山水、草木、花鳥などの幽邃なる色彩文画を描いたことで、品質が向上し、雅致風流に富んだものとなりました。
涼み提灯として九州全土で歓迎され、盛夏の折には軒下や楼上などにかけて納涼用として利用されました。

しかし、この提灯は描き絵に手間と費用を要するため、大量生産には不向きであり、広く一般の需要に応えることはできませんでした。

弟・吉永伊平の改良

明治初年に入ると、藩政府の贅沢禁止令が解かれ、一般庶民の生活様式における制限が撤廃されたため、福島提灯に対する需要が急速に伸びる条件が生まれました。
この情勢に対応するため、吉永太平の弟である伊平が早描きの描画法を応用して、製造時間と価格を大幅に低減することに成功しました。これが福島提灯における第二次改良の端緒といわれています。

また、形状、絵画、付属品なども年を追って工夫改良を施したことで、各地の需要も急速に増加し、販路を拡大するために一部はアメリカ、イギリス、香港、英領インドなどの海外にも輸出されるようになりました。そして、重要物産として世の称賛を博するまでに至りました。

伝統工芸品の指定

その後、福島提灯は八女地方全域で生産されるようになったため、「八女提灯」と呼ばれるようになりました。そして平成13年7月3日には、経済産業大臣より経済産業省として初の「日本の伝統的工芸品」に指定されました。

八女提灯は、その美しい意匠と伝統的な製法によって、日本の文化を彩る貴重な工芸品として、現在も大切に受け継がれています。

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