八幡水力電気

八幡水力電気の歴史

八幡水力電気（はちまんすいりょくでんき）は、明治末期から大正初期にかけて岐阜県郡上郡八幡町（現在の郡上市）で活躍した電力会社です。本社は1898年に設立され、当初は合資会社としてスタートしました。その後、1906年に株式会社に改組されましたが、地域的な小規模事業者であり続け、1922年には東邦電力に合併されて解散しました。

合資会社時代

八幡水力電気の創設者は、水野伊兵衛という人物で、彼は郡上郡での鉄道敷設計画に従事していました。出張先の金沢で電灯事業の計画を耳にし、八幡町でも水力発電ができるのではないかと考え、水力発電の設置を決意しました。技術者の協力を得て、乙姫滝を利用した発電所を建設することになり、1898年8月に八幡水力電気合資会社が設立されました。

設立当時の資本構成は、岡本太右衛門が経営を引き受ける提案をしたものの、水野は自身の考えを尊重し、出資割合を岐阜側が6割、八幡側が4割と定めました。発電所の設備は、ペルトン水車のほか、エジソン型の直流発電機が設置され、試運転を行うも初期の運転に問題が生じました。その後、蒸気機関の導入により市内への配電が実現し、1898年11月22日に本格的な運転が開始されました。しかし、出力25キロワットと小規模な発電所であり、水源の状況により発電量は限られていました。

株式会社時代

1906年には組織変更が行われ、八幡水力電気合資会社から八幡水力電気株式会社として新たにスタートしました。資本金は1万5000円で、役員はすべて八幡町内出身者でした。新たな発電所が吉田川沿いに建設され、1907年には60キロワットの出力を持つ発電所が完成しました。この発電所の運転は市内の電力需給に貢献しました。

その後も増資が行われ、最終的には資本金は4万5000円にまで増加しました。1921年時点では供給実績が大幅に向上し、電灯需要家数は1990戸、取付数は4076灯に達しました。

しかし1922年、周辺の電力事業者との合併により八幡水力電気は解散を迎えることになります。合併条件では、新株が発行され、それが八幡水力電気の株主に配分される形でした。この合併により八幡水力電気の歴史は幕を閉じました。

遺構と記念碑

八幡水力電気の発電所跡は現在も訪れることができ、乙姫川沿いには歴史を示す標識が立てられています。かつての水力発電所の跡は完全には残っていないものの、 水路跡や取水跡などの遺構が一部見受けられます。また、近隣にある慈恩禅寺は当時の需要家であり、現在もその歴史的価値を保っています。

さらに、吉田川沿いには八幡水力電気の記念碑が立てられ、社章や社歴が刻まれているほか、地域の歴史に触れる貴重な場所となっています。八幡水力電気が果たした役割は、岐阜県における電力事業の重要な足跡として、今も人々に語り継がれています。これらの遺構や記念碑は地域を訪れた際に、興味深い歴史を感じることができるでしょう。

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