八幡荘 (下総国)

八幡荘（やわたのしょう）

八幡荘は、中世に下総国葛飾郡（現在の千葉県市川市北部）に存在した荘園です。この荘園は、谷中郷、蘇谷（曽谷）郷、中沢郷、大野郷の4つの郷から構成されていました。

歴史

八幡荘の前身は、保元3年（1158年）の官宣旨に記された石清水八幡宮領「下総国葛餝別宮」と考えられています。この地域は、平安時代末期から鎌倉時代にかけて、石清水八幡宮の荘園として管理されていたと考えられます。

『吾妻鏡』には、文治2年（1186年）に「八幡」という記述が見られますが、荘園領主に関する記載はありません。鎌倉時代には、千田泰胤から娘婿の千葉頼胤に継承されたとされています。荘園の代官は富木常忍、曾谷教信、太田乗明らが務めていました。

日蓮宗との関わり

特筆すべきは、八幡荘が日蓮宗と深い関わりを持っていた点です。代官たちは迫害を受けていた日蓮を迎え入れ、保護しました。富木常忍は日蓮の没後に出家し、日常と号しました。彼は日蓮のために自邸に建てた法華堂を法花寺と改め、初代貫首となりました。

また、太田乗明の子である日高は、父の屋敷を本妙寺として日常の後を継ぎ、第2世貫首となりました。天文14年（1545年）には、古河公方足利晴氏から法花寺と本妙寺の両寺を統合する寺号として「法華経寺」が贈られました。この法華経寺は現在も市川市中山に存在し、日蓮宗の重要な寺院となっています。

法華経寺領へ

元応2年（1320年）には、本妙寺の俗別当であった頼胤の嫡孫である胤貞が、猶子であり第3世貫首の日祐に八幡荘の一部を譲与しました。その後、南北朝時代を通じて、八幡荘のほとんどの地域が胤貞流千葉氏によって法華経寺に寄進され、法華経寺領として伝えられました。

八幡荘は、中世の荘園制度や地域社会、そして日蓮宗の歴史を理解する上で重要な場所と言えるでしょう。

脚注

『吾妻鏡』
『中山法華経寺文書』

関連項目

葛飾郡
葛飾八幡宮
八幡宿、八幡 (市川市)
八幡の藪知らず

参考文献

川出優「八幡荘」『千葉大百科事典』（千葉日報社、1982年）
中尾堯「八幡荘」『国史大辞典 14』（吉川弘文館、1993年）ISBN 978-4-642-00514-2

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