法華経寺

法華経寺は、千葉県市川市中山に位置する日蓮宗の大本山で、その歴史は鎌倉時代にまで遡ります。文応元年（1260年）に開かれたこの寺院は、中山法華経寺とも呼ばれ、山号を正中山と称しています。この地域名「中山」の由来になったという説も存在します。

概要

法華経寺は、中山三法類（親師法縁、達師法縁、堺法縁）の縁頭寺であり、日蓮聖人が説法を行い、安息の地として過ごした場所です。境内には鬼子母神が祀られており、広く信仰を集めています。この鬼子母神は、江戸三大鬼子母神の一つとしても知られています。

寺内には、日蓮聖人の書跡である国宝『観心本尊抄』や『立正安国論』をはじめ、多くの重要文化財が保存されています。日蓮聖人は、布教活動中に幾度も迫害を受けましたが、その際、千葉氏に仕えていた富木常忍や大田乗明によって保護されました。特に富木常忍は、日蓮聖人のために自邸に法華堂を建て、安息の場を提供し、執筆活動を支援しました。この縁により、法華経寺には日蓮聖人の多くの遺文が残されています。

法華経寺の周辺には門前町が広がり、正月や節分などの時期には多くの参拝客で賑わいます。

歴史

日蓮聖人が没した後の弘安5年（1282年）、富木常忍は出家し、自邸の法華堂を法花寺と改め、初代住持となりました。また、日蓮聖人の有力な檀家であった大田乗明の子、日高は、父の屋敷を本妙寺とし、2代目住持となりました。その後、八幡庄の領主であった千葉胤貞が帰依し、その猶子である日祐が3代目住持となりました。

しかし、千葉氏の衰退とともに寺は危機を迎えました。そのような状況下、日祐は室町幕府との関係を強め、寺を復興させ、中山門流を確立しました。

日高以来、歴代の住持は本妙寺と法花寺を兼務していましたが、天文14年（1545年）に古河公方足利晴氏より「諸法華宗之頂上」の称号が贈られ、寺号を「法華経寺」と改めました。これにより、法花寺と本妙寺は統合され、一つの寺院となりました。

昭和20年（1945年）には、アメリカ軍の空襲により門前に焼夷弾が着弾し、周辺の民家が全焼する被害を受けました。

沿革

法華経寺は、文応元年（1261年）に開基されました。

昭和21年（1946年）には、126世宇都宮日綱上人の代に、一部の末寺とともに日蓮宗を離脱し、「中山妙宗」を設立しました。これは、法華経寺が明治時代に日蓮宗に所属させられた経緯があり、戦後の宗教の自由化に伴い、本来の独立した立場に戻ることを目指したものでした。その後、昭和47年（1972年）に132世武井日進上人の代に日蓮宗に復帰しました。

法華経寺は、かつて300以上の末寺を有していましたが、昭和16年（1941年）に日蓮宗の本末制度が解体されたため、現在は旧本山、旧末寺と呼んでいます。

中山法華経寺事件

天保12年（1841年）には、寺の僧侶による不祥事が発覚しました。2名の僧侶が多くの女性を騙し、奢侈に耽っていたことが幕府に報告され、逮捕されました。この事件では、老中水野忠邦が綱紀粛正を進め、寺社奉行の阿部正弘が迅速な対応をしたことで、阿部正弘の名が知られるきっかけとなりました。

境内

法華経寺の境内には、多くの歴史的建造物や堂宇があります。

総門（黒門）
仁王門（赤門）
祖師堂（重要文化財）
本院・大客殿
鬼子母神堂
荒行堂
五重塔（重要文化財）
日常上人像
銅造釈迦如来坐像（中山大仏）
刹堂
妙見堂
法華堂（重要文化財）
四足門（重要文化財）
宇賀神堂
清正公堂
太田稲荷社
宝殿門
聖教殿
蔣介石胸像

中山療養院

法華経寺では、古くから病者を収容し、信仰読経による治療を行っていました。明治時代には、参籠所や修法所を設け、祈祷や水治を行なっていましたが、時代とともに医師法に触れるようになり、明治42年(1909年)に県に申請して刹堂の裏手の丘に中山療養院を建設しました。大正6年（1917年）には医師による治療が開始され、大正10年（1921年）には本山の手を離れ、精神科医と檀徒の共同経営に移り、中山脳病院と改称、その後、昭和23年（1948年）に中山病院、昭和27年（1952年）に医療法人静和会中山病院となりました。

人物

法華経寺の歴史に関わる主な人物は以下の通りです。

日常（法華経寺開祖、法華寺開山）
日頂（六老僧の一人、日常の養子）
日高(僧)（法華経寺二世、本妙寺開山）
日祐（法華経寺三世）
日英_(中山門流)（日祐の弟子）
日尊(法華経寺)（法華経寺四世）
日せん（法華経寺五世）
日薩（法華経寺六世）
日有(法華経寺)（法華経寺七世）
日院(法華経寺)（法華経寺八世）
蓮性院日相（法華経寺39世）
現住は145世新井日湛伝主

山内寺院・塔頭

法華経寺の境内には、多くの山内寺院や塔頭があります。

正中山池本寺
仁受山智泉院
正中山陽雲寺
大覚山本妙寺（根切の祖師）
正中山遠寿院
正中山本光寺
護国山安世院（四院家）
正中山高見寺
如意山蓮行寺
玄妙山本行院（四院家）
正中山清水寺
永昌山浄鏡寺
正中山浄光院（四院家）
法宣院（四院家）
本覚山日英寺
奥之院
東照山妙円寺

文化財

法華経寺には、多くの文化財が所蔵されています。

国宝

観心本尊抄日蓮筆
立正安国論日蓮筆

重要文化財

五重塔
祖師堂
法華堂
四足門
絹本着色十六羅漢像趙璚筆
日蓮筆遺文

市川市指定文化財

黒門
本阿弥家分骨墓
光悦筆扁額
本阿弥光悦分骨墓

その他

聖教殿：設計伊東忠太

年中行事

法華経寺では、年間を通して様々な行事が行われています。

新年祈祷会（1月1日 - 3日）
節分会（2月3日）
大荒行満行会（2月10日）
子育大祭（1月、5月、9月の各8、18、28日）
彼岸施餓鬼会（春分の日、秋分の日）
花まつり（4月8日）
千部会（4月15日 - 20日）
太田稲荷大祭（5月28日）
宇賀正徳神大祭（6月1日）
清正公大祭（6月24日）
御蘭盆施餓鬼（7月18日）
八大龍王大祭（10月1日）
大荒行入行会（11月1日）
妙見尊星大祭（11月の酉の日）
御会式（11月15日 - 18日）
納めの子育祭（12月28日）
おたきあげ（12月28日）
除夜祈祷会（12月31日）

交通

法華経寺へのアクセスは以下の通りです。

公共交通機関

京成電鉄：京成本線京成中山駅から徒歩約3分
JR東日本：中央・総武緩行線下総中山駅から徒歩約8分

自動車

高速道路：首都高速7号小松川線・京葉道路
京葉市川インターチェンジ
原木インターチェンジ
一般道路：国道14号、千葉県道59号市川印西線（木下街道）

駐車場

無料駐車場あり（50台、9:00 - 16:00）
大型車は駐車不可

脚注

注釈

出典

参考文献

湯浅治久『中世東国の地域社会史』、岩田書院、2005年
斎藤幸雄「巻之七揺光之部正中山本妙法華経寺」『江戸名所図会』

関連項目

日本の寺院一覧
国宝一覧
日蓮
中山大仏
秋本寺
奉免町の由来
専行院
ちば遺産100選
比翼入母屋造
法明寺 (豊島区)
真源寺

外部リンク

日蓮宗大本山中山法華経寺ホームページ
正中山法華經寺境内之全圖 - 船橋市西図書館船橋市デジタルミュージアム
* 中山下町散歩道

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