八戸大火

八戸大火（1924年）

八戸大火とは、青森県八戸市の中心市街地で過去に発生した大火の総称ですが、特に1924年（大正13年）5月16日に発生した大火を指すことが一般的です。この大火は、八戸の歴史において最も甚大な被害をもたらした災害の一つとして記録されています。

大火の背景

江戸時代から八戸は度々火災に見舞われていましたが、特に戦前には人口増加に伴い市街地の家屋が密集し、火災に対する脆弱性が高まっていました。そのような状況下で発生した1924年の大火は、八戸の街に壊滅的な打撃を与えました。

江戸時代～明治時代の大火

1924年の大火以前にも、八戸では以下のような大火が発生しています。

1864年（元治元年）の大火（清次郎焼け）: 12月28日に廿三日町から出火し、家屋317棟などが焼失。
1888年（明治21年）の大火（莨屋焼け）: 4月9日に廿六日町から出火し、家屋312棟などが焼失。

これらの大火も八戸の街に大きな被害をもたらしましたが、1924年の大火はその規模と被害の甚大さにおいて、過去の火災をはるかに上回るものでした。

1924年の大火

出火原因と延焼

1924年5月16日午前0時50分、八戸町本鍛冶町（現在の神明宮裏）の経木職人のカマドの残り火から出火しました。折からの強い南西の風にあおられ、火は瞬く間に燃え広がり、八戸町を焼き尽くしました。

消火活動

火災発生と同時に半鐘が鳴り響き、八戸の消防組だけでなく、近隣の町村からも消防隊が駆けつけました。2,000人以上の消防団員が蒸気ポンプや腕用ポンプを用いて消火活動にあたりましたが、消防水利が乏しく、強風にあおられたため、消火活動は難航しました。

被害状況

この大火により、死者4名、重軽傷者183名、被災戸数1,393棟、被災者6,957名、損害額750万円（現在の価値で約580億円）という甚大な被害が発生しました。町の中心部が焼失し、三戸郡役所、銀行、新聞社など主要な建物も焼失しました。

焼失した主な建物: 三戸郡役所、東奥日報支局、盲人学校、第五十九銀行支店、盛岡銀行支店、八戸商業銀行、階上銀行、泉山銀行、錦座、八戸新聞社など
焼失を免れた建物: 八戸町役場、八戸区裁判所、八戸警察署、八戸郵便局

被災区域は、廿三日町、十三日町、三日町、六日町、八日町、十八日町、廿八日町、塩町、下組町表通り、廿六日町、六日町、朔日町、十一日町、下大工町、柏崎新町の裏通り、鳥屋部町、鷹匠小路、長横町、岩泉町など、八戸町のほぼ半分に及びました。

被災者支援

大火発生後、青森県は「八戸町火災救護会」を組織し、被災者への低金利貸付などの支援を行いました。この事業は1935年（昭和10年）まで続けられました。

大火からの復興

八戸大火後、近代的な都市計画に基づく復興計画が立案されましたが、関東大震災後の不況の影響で、計画は大幅に縮小されました。道路拡張計画も資金難のため実現せず、火災前の道路形状がほぼそのまま残されることになりました。そのため、現在に至るまで八戸市の中心街の道路は、江戸時代の城下町の面影を残しています。

また、復興需要による地価高騰により、地代が引き上げられ、大火前に居住していた住民は郊外へ移住せざるを得なくなりました。一方で、岩手県種市（現在の洋野町）などから八戸へ移住してくる人々もいました。大火後は、洋風建築や鉄筋コンクリート造の建物が建てられるようになり、八戸市八日町の旧河内屋合名会社の社屋（国有形文化財）はその代表的な例です。

八戸大火は、八戸の街に大きな爪痕を残しましたが、復興に向けた人々の努力により、街は再び活気を取り戻しました。しかし、この大火の教訓は、防災に対する意識を高め、今後の災害に備えることの重要性を私たちに教えています。

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