八木健三

八木健三：岩石学者と自然保護運動家の生涯

八木健三（1914年9月5日-2008年7月18日）は、日本の岩石学者にして、情熱的な自然保護運動家でした。東北大学、北海道大学で教授を務めた後、北星学園大学教授として教鞭を執り、日本の地質学研究に多大なる貢献を果たしました。その功績は、学術界のみならず、環境保護の分野にも深く刻まれています。

長野県長野市に生まれた八木は、旧制伊那中学、旧制八高を経て、1938年に東北帝国大学理学部岩石鉱物学科を卒業します。卒業後は母校の助手となり、1951年には教授に昇進。その後、1962年から1978年までは北海道大学理学部地質学鉱物学科教授として活躍しました。1978年から1988年にかけては、北星学園大学教授として後進の育成に尽力しました。

八木は1949年、東北大学より「樺太、北海道に於ける特殊なる岩漿分化現象の研究」で理学博士号を取得しています。これは、樺太と北海道の特異な地質現象に関する画期的な研究であり、日本の地質学の発展に大きく貢献しました。さらに、日本学術会議会員として、発展途上国との学術交流にも積極的に取り組み、国際的な学術連携に尽力しました。

八木の岩石学への貢献は、国際的にも高く評価されています。スペインのアンダルシア地方で発見されたコロンメーラ隕石から発見された新鉱物は、1969年、八木への敬意を表して「八木石（Yagiite）」と命名されました。これは、彼の岩石学における卓越した業績を称える、大きな栄誉と言えるでしょう。

しかし、八木の功績は学術研究のみに留まりません。彼は熱心な自然保護運動家として、北海道の自然保護に多大な貢献をしました。北海道自然保護協会会長を務め、知床国有林の保護活動に積極的に関わりました。特に1996年、大雪山国立公園内の士幌高原道路建設計画に対し、希少な野兔の生息地を守るため、当時の堀達也北海道知事に道路建設反対の住民訴訟を提起しました。元環境庁長官の大石武一氏らの支援も得て、この計画は最終的に中止となりました。

また、1998年長野オリンピックの開催に際しては、男子滑降コースの延長に反対し、環境破壊の防止に尽力しました。これらの活動は、彼の強い環境倫理観と、自然保護に対する揺るぎない信念を示すものです。

八木は「九条科学者の会」の呼びかけ人を務めるなど、平和運動にも積極的に参加していました。彼の活動は、学問、環境保護、平和という、人間の未来にとって重要な三つの柱を支えるものでした。

八木健三の生涯は、学問への探究心と、自然への深い愛情、そして平和への強い願いが一体となった、稀有な人生でした。彼の功績は、これからも日本の地質学、そして自然保護の歴史に刻み込まれ続けるでしょう。父は長野県地学会初代会長の八木貞助。

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