八木好美

八木好美は、1914年（大正3年）3月24日に兵庫県揖保郡越部村觜崎（現在のたつの市新宮町觜崎）に生まれた日本の詩人です。本名を美衛といい、警察官であった父の長男として生を受けました。

生い立ちと文学への道

幼少期の一時期、父の仕事の関係で姫路での生活を経験しましたが、その後故郷に戻り、兵庫県立龍野中学校に入学しました。この中学校時代、作文を先生に褒められたことが、文学を志す大きなきっかけとなりました。学生の頃から詩作に励み、『愛誦』や『若草』、『山脈』といった詩誌に積極的に作品を投稿するようになります。また、『山陰詩人』、『詩創元』、『ばく』などの同人誌に参加する一方で、自らも詩誌『火虹』や『深苑』を主宰し、精力的な活動を展開しました。この時期に出会った大塚徹や植原繁市といった友人たちは、生涯にわたり彼にとって重要な存在となります。

教師としての歩みと創作活動

1933年（昭和8年）からは教師としての道を歩み始め、揖保郡、佐用郡、龍野市内の小中学校で教鞭を執りました。教育者としての傍ら、創作活動も継続します。21歳を迎えた1935年（昭和10年）には、初の詩集となる『花の雫』を上梓しました。抒情豊かなこの詩集は、若き日の感性を映し出しています。

詩作に加えて、八木は多岐にわたる分野でその才能を発揮しました。児童向けの映画シナリオ執筆、地域の学校の校歌作詞、さらにはプロ野球チーム「ライオン軍」の応援歌作詞（作曲は山田耕瑳）など、活動の幅は広く、その多彩な才能を示しました。特に校歌は、三日月町立広業国民学校をはじめ、新宮町立越部幼稚園、上月町立幕山小学校、太子町立太子西中学校など、多くの学校で手がけました。作曲家・鈴木史朗氏との協業も多く、地域の教育や文化に深く関わりました。

戦中・戦後の活動

1941年（昭和16年）から1945年（昭和20年）にかけては軍に入隊し、一時的に文学活動から離れざるを得ませんでした。しかし、終戦を迎えた1946年（昭和21年）には創作活動を再開。「神戸復興まつりの歌」や、NHKの番組で使用された「ねんねん揺籠」（作曲：斉藤登）の作詞などを手がけました。戦後も、『新涛』や『朗詠詩』といった文芸雑誌に精力的に作品を発表し続け、日本の戦後詩壇においても一定の存在感を示しました。

交流と晩年

長年の友人である大塚徹氏とは深い交流を続け、1974年（昭和49年）には共著詩集『花と獏と』を刊行。互いの詩作活動を支え合いました。

詩人、教育者、そして地域文化の担い手として多大な足跡を残した八木好美は、1996年（平成8年）5月17日にその生涯を閉じました。

主な作品

詩
「防風林の詩」
「コスモスの家の詩」
「栗石道の花・驢馬」
「二十四の瞳」
作詞
「制覇に進む若き獅子」（プロ野球「ライオン軍」応援歌）
「ねんねん揺籠」
「揖保川音頭」
多数の校歌、園歌

著作

『花の雫 : 抒情詩文集 八木好美青春詩集』（棕櫚の葉社、1935年）
『花と獏と』（大塚徹との共著、深苑社、1974年）

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