八端十字架

八端十字架とは

八端十字架（はったんじゅうじか）は、その名の通り8つの先端を持つ十字架で、主にロシア[[正教会]]やウクライナ[[正教会]]などのスラヴ系正教会で頻繁に使用されます。アメリカ[[正教会]]や日本正教会などでも見られ、古儀式派でもよく用いられています。しばしば「ロシア十字」と呼ばれることがありますが、これは正確な呼び方ではありません。なぜなら、この十字架はロシアだけでなく、他の多くの正教会でも使われているからです。

形状の意味

八端十字架の最大の特徴は、上部と下部にある2本の横木です。これらの横木は、それぞれ異なる意味を持っています。

上部の横木: これは、キリストが磔刑にされた際に掲げられた罪状書きを表しています。本来は「ユダヤ人の王」と書かれていましたが、正教会では「光栄の王」と解釈されています。
下部の斜めの横木: これは、キリストが足を置いた足台を表しています。斜めになっているのは、キリストと共に磔刑にされた二人の盗賊の運命を表しています。右側の盗賊はキリストを救世主と認め、天国への道を約束されたとされています。一方、左側の盗賊はキリストを罵ったため、足台が下向きに傾いているのです。これは、キリストから見た左右を表しています。

「ラズボイニカ」

正教会では、この右側の盗賊（「善き盗賊」や「聖ディスマス」とも呼ばれる）を讃える祈祷文「善智なる盗賊」が、聖大金曜日の早課で歌われます。この聖歌は、教会スラヴ語で「Разбойника（ラズボイニカ）」と呼ばれ、多くの作曲家によって作曲されてきました。

様々な通称とその誤解

八端十字架には、様々な通称が存在します。しかし、これらの通称には誤解を招きやすいものも少なくありません。

ロシア十字

「ロシア十字」は、八端十字架の通称として最もよく知られています。しかし、この呼び方は正確ではありません。なぜなら、ロシア[[正教会]]では八端十字架以外にもギリシャ[[十字]]など、様々な十字架が用いられているからです。また、六端十字架も「ロシア十字」と呼ばれることがあります。

正教会の十字

「正教会の十字」という呼び方も広く使われていますが、これもまた正確ではありません。八端十字架は正教会で頻繁に用いられますが、唯一の正教会の十字架というわけではありません。ギリシャ系の正教会では、八端十字架はあまり使用されていません。

横棒三本十字

英語では「three bar cross」と呼ばれることもあります。しかし、横棒が三本の十字架はカトリック教会でも用いられているため、混同しないよう注意が必要です。

その他の誤解を招きやすい通称

「東方十字」や「ビザンティン十字」という呼び方も見られますが、これらは八端十字架がスラヴ系の正教会で主に使われることを考えると、誤解を招きやすい表現です。ビザンティン十字に至っては、歴史的に見ても誤った名称と言えるでしょう。

まとめ

八端十字架は、その独特な形状と深い意味を持つ、正教会にとって重要なシンボルです。その形状は、キリストの磔刑と救いの物語を象徴的に表現しています。様々な通称がありますが、その意味を正しく理解することが大切です。

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