八通関古道

八通関古道：台湾を東西に結ぶ歴史の道

八通関古道は、清朝統治時代の台湾に建設された、台湾本島を東西に横断する三本の道路の一つであり、現存する唯一の道です。西は林圮埔（現在の南投県竹山鎮）から東は璞石閣（現在の花蓮県玉里鎮）まで、全長152kmに及びます。この古道は、中華民国内政部によって国家一級古蹟に指定されており、台湾の歴史と文化を今に伝える重要な遺産です。

八通関古道の成り立ち

八通関古道の建設は、清朝が台湾中部を統治する上で重要な転換点となりました。建設の背景には、1874年の牡丹社事件を契機とした日本の出兵や、列強諸国が台湾に関心を示し始めたことなど、台湾の国防上の重要性が高まったことが挙げられます。また、当時、台湾西部の平野部では開墾がほぼ完了しており、新たな開拓地を求める移民のいさかいが絶えなかったことも要因です。東部には広大な未開発の土地が広がっていましたが、中央山脈によって隔てられていたため、人々が自由に移動して開墾することが困難でした。このような状況下で、沈葆楨は台湾を東西に横断する道路の建設を提案し、その一つが八通関古道となったのです。

台湾全島の現地調査の結果、沈葆楨は以下の三本の道路建設を提案しました。

北路：噶瑪蘭蘇澳から花蓮奇莱まで
中路：彰化林圮埔から花蓮璞石閣まで
* 南路：屏東射寮から台東卑南まで

このうち、中路が現在の「八通関古道」にあたります。呉光亮が責任者として建設にあたり、1875年1月に林圮埔から東へ向けて開削を開始、大坪頂、鳳凰、牛轀轆、茅埔、八通関、大水窟を経て、同年11月に璞石閣まで到達しました。古道は道幅6尺と非常に大規模で、岩場には石を積んで階段を作り、渓流には桟道が設けられ、要所には砦が築かれました。完成後、清朝は開墾者を募り、兵を配置して開墾を進めましたが、自然環境や原住民の抵抗により、その成果は限定的でした。八通関古道は、建設からわずか20年ほどで廃道となってしまいました。

日本統治時代の再建

日本統治時代に入ると、台湾総督府はブヌン族の制圧を目的として八通関古道を再建しました。工事は1919年から1921年にかけて行われ、植民地支配の拠点として沿線には56箇所もの駐在所が設けられました。再建された古道は、東西を大水窟で分け、西側は楠仔脚万（現在の南投県信義郷久美村）から大水窟まで約42km、東側は玉里から大水窟まで約82km、合計145kmとなっています。この日本人が建設した八通関越嶺道路は、清朝時代の八通関古道とはルートが異なり、重複する部分はほとんどありません。

八通関越嶺道路の目的は、東西の交通を確保するだけでなく、原住民に対する統治と「教育」を強化することでした。また、森林資源の開発も進められ、沿線には警察の駐在所や関連施設が設置されました。

現存する古道

第二次世界大戦後、八通関越嶺道路は一時荒廃しましたが、台湾省林務局が一部を修繕し、林業保護管理のために使用しました。現在残っている古道は、一部は清朝時代のもの、一部は日本統治時代のものですが、日本統治時代のものが大部分を占め、状態も比較的良好です。

清朝時代の古道で比較的わかりやすく、通行可能な部分としては、南投県信義郷東埔から陳有蘭渓右岸を通り、父子断崖、雲龍瀑布、楽楽、対関を経て八通関草原までの区間です。しかし、そこから先は通行が困難な状況です。古道の多くは草に覆われて判別が難しくなっていますが、八通関草原にはっきりと古道の遺跡が残っています。その他、比較的アクセスしやすい場所としては、父子断崖の対岸にある幅8尺の64段の石段や、乙女瀑布付近にある小規模な石段などがあります。

現在の八通関古道は、全て玉山国家公園の管轄下にあります。1987年、清朝時代の八通関古道は、中華民国内政部から国家一級古蹟に指定されました。この古道は、台湾の歴史と自然が織りなす貴重な遺産であり、訪れる人々にその歴史を伝えています。

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