公共工事前払金保証事業

公共工事前払金保証事業：建設業を支えるセーフティネット

公共工事の前払金保証事業とは、国や地方公共団体などが発注する公共工事において、請負業者への工事代金の一部を前払いする場合、その前払金額を保証事業会社が保証する制度です。これは、建設業特有の資金繰り事情を考慮した、重要な社会基盤整備事業と言えるでしょう。

事業の意義：建設業の資金調達支援と発注者リスク軽減

建設業は、労働集約的で資金調達に苦労する一面があります。特に公共工事は契約金額が大きいため、着工に必要な資金を確保することが、中小企業にとって大きな負担となる場合があります。そこで、発注者が工事着手前に代金の一部を前払いする制度が設けられています。

しかし、発注者側もリスクを抱えます。前払後、請負業者が倒産したり、資金を流用したりする可能性があるからです。このリスクを軽減するために、前払金保証事業が登場しました。保証事業会社が前払金を保証することで、発注者はリスクを負わずに、建設業者の資金繰り支援を行うことができるのです。

制度の概要：前払金保証の仕組みと流れ

前払金の支出は、会計法や地方自治法などに基づいて行われます。前払金の割合は通常請負額の30％ですが、最大40％、場合によっては中間前払金と合わせて60％まで認められるケースもあります。

請負契約には、「前金払」条項が盛り込まれており、請負業者が前払金を請求します。この際、保証事業会社が発行する保証証書が必要となります。発注者は、この保証証書と請求書を基に前払金支払いを決定します。この保証は、請負者と発注者以外の第三者である保証事業会社が行うため、発注者はリスクを回避できます。民法上の「第三者のための保証契約」に該当します。

前払金保証の範囲：既払額を対象とした包括的な保証

前払金保証は、単なる前払金額の保証ではありません。前払金に加え、工事施工中に支払われた部分払も保証の対象となります。この「既払額」に対する保証である点が重要です。例えば、前払金40％、部分払30％で、契約解除時点での出来高が60％であれば、保証事業会社は10％分の損害を補償します。

部分払いは、業界慣例として「九分金払い」（出来高の90％支払）で行われることが多いため、前払率と出来高によっては、保証事業会社がリスクを負う場合もあります。

前払金保証の機能：多角的な効果を発揮

前払金保証事業は、以下の機能を有しています。

損害填補機能: 請負者の不測の事態により発注者が被る損害を補償します。
信用供与機能: 請負者の資金調達を支援し、事業継続をサポートします。
* 工事完成促進機能: 円滑な工事施工に貢献します。

前払金保証事業会社：建設業専門の与信機関としての役割

前払金保証事業会社は、戦後、地元建設企業や銀行などの出資で設立されました。建設業の近代化に大きく貢献してきましたが、近年は公共投資の縮小により経営が厳しくなっています。

損害保険会社や金融機関への業務拡大も議論されていますが、建設業特有の事情から、専門的な知見を持つ前払金保証事業会社の重要性は依然として高いと言えるでしょう。

現在、西日本建設業保証、東日本建設業保証、北海道建設業信用保証の3社が事業を展開しています。

日本標準産業分類

日本標準産業分類では、公共工事前払金保証事業は「金融業、保険業」の中の「補助的金融業等」に分類されています。

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