公園通りの猫たち

公園通りの猫たち：野良猫と少女たちの物語、そして興行の失敗

1990年、東映から正月映画として公開された『公園通りの猫たち』は、渋谷の公園通りに住む野良猫と、ミュージカルスターを夢見る少女たちの交流を描いた作品です。荻野目洋子を筆頭に、五十嵐いづみ、伊藤智恵理ら豪華キャストが出演し、音楽、ダンス、そしてアニメーションと多彩な要素が盛り込まれた意欲作でした。しかし、公開当時の興行成績は振るわず、作品評価も芳しくありませんでした。監督の中田新一氏自身も、この作品を大失敗と振り返っています。

物語：猫と少女たちの織りなすハーモニー

物語の中心は、公園通りで自由奔放に暮らす野良猫たちと、ミュージカルで成功を夢見る少女たち、カルー、リエ、マユミの3人です。彼女たちは歌と踊りのレッスンに励む一方、公園通りの野良猫たちと不思議な友情を育んでいきます。

物語は、ミュージカルに野良猫たちを参加させようという演出家の提案から動き出します。猫好きな少女たちは喜んでレッスンに参加しますが、そこに「キャット・バスターズ」という謎の組織が猫狩りを開始し、子猫たちが次々と捕まっていくという事態が発生します。少女たちは、仲間である猫たちを救うため、奮闘することになります。

キャストとスタッフ：豪華な顔ぶれ

本作には、荻野目洋子、五十嵐いづみ、伊藤智恵理といった当時の人気女優陣に加え、万里洋子、石橋蓮司といったベテラン俳優も出演しています。また、猫役には多くの猫たちが参加し、リアルな猫たちの姿が作品に深みを与えています。

監督は中田新一氏、原作・脚本は早坂暁氏と、映画界を代表する才能が集結しています。音楽監督は多賀英典氏、音楽は森英治氏が担当し、主題歌は荻野目洋子氏が歌っています。その他にも、多くのスタッフが参加し、完成度の高い作品を目指したことがうかがえます。アニメーションパートは東映動画と東京ムービー新社が担当し、クオリティの高い映像表現を実現しています。

製作：東映の意欲作、しかし…

製作発表会見では、東映が社運を賭けた作品として大々的に宣伝されました。ハイビジョン技術やアニメーションとの合成など、当時としては最先端の技術が使用され、大ヒットへの期待が込められていました。しかし、結果的には興行収入は低迷し、期待を大きく裏切る結果となりました。

脚本と撮影：現実とフィクションの融合

早坂暁氏は、公園通りで実際に暮らす猫たちを長期間観察し、その様子をエッセイにまとめました。そのエッセイを基に脚本が書かれ、渋谷の街並みを巧みに再現したロケが行われました。撮影では、猫たちの扱いに苦労した様子や、脚本の完成が遅れたことによるスケジュール変更などがうかがえます。

作品の評価：成功を収められなかった理由

本作は、公開当時から話題にはならず、わずか4週間で上映が打ち切られました。様々な要因が考えられますが、猫を扱うことに難しさがあったこと、ミュージカルという要素が万人受けしなかったこと、当時流行した動物映画における動物虐待問題への意識の高まりなどが挙げられます。

結論：時代を反映した問題作

『公園通りの猫たち』は、商業的な成功には至らなかったものの、猫と人間の交流、少女たちの夢、そして当時の社会情勢など、様々な要素が複雑に絡み合った興味深い作品です。興行成績や評価とは別に、その製作過程や背景を知ることで、作品への理解が深まるでしょう。現在では、東映シアターオンラインで視聴可能です。この機会に、ぜひご覧になってみてください。

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