公孫勝

公孫勝（こうそんしょう）

中国の四大奇書の一つに数えられる長編小説『水滸伝』において、梁山泊の重要な一員として描かれるのが公孫勝である。彼は天間星の宿星を背負い、百八人の好漢の中でも序列第四位という高い位置に名を連ねる人物だ。そのあだ名は「入雲龍」（にゅううんりゅう）、道号を「一清道人」と称する。

公孫勝は道術の修行を積んだ道士であり、梁山泊においては智謀に長けた呉用と共に軍師として、戦略と法術の両面から組織を支えた。その人物像は、俗世から隔絶した雰囲気を持ちながらも、時には血気盛んな無頼の一面も見せる。例えば、晁蓋の屋敷の小作人に対して無礼な態度があったとして、容赦なく殴り倒すような荒々しさも持ち合わせていた。また、その外見は、非常に背が高く堂々とした体格の偉丈夫として描写されている。

物語の中での活躍

公孫勝の物語は、当時名高かった豪傑・晁蓋に対し、高官への賄賂である生辰綱を奪取する計画を持ちかけることから始まる。彼は、これが民の血税で賄われた不義の財であると喝破し、奪うことの正当性を主張した。晁蓋や呉用といった面々とともに見事に生辰綱強奪を成功させ、これを契機に梁山泊へと身を寄せることになる。

梁山泊に入って以降、公孫勝は仙人・羅真人から伝授された強力な道術を駆使し、度々組織の危機を救う活躍を見せる。風雨を操り、神兵を呼び寄せるその法力は絶大であり、特に敵対する妖術使いとの戦いにおいては彼の存在が不可欠であった。

妖術使いとの対決: 柴進救出の際に立ちはだかった妖術使いの高廉を筆頭に、芒碭山の首魁・樊瑞、遼の賀重宝など、数多くの術者との戦いで梁山泊軍の窮地を幾度も救っている。
喬冽との激闘: 田虎軍の国師である喬冽は、公孫勝自身も認めるほど互角の法術の使い手であった。この強敵との戦いでは、五色の竜や大鵬を召喚するなど、互いの法力の限りを尽くした壮絶な戦いが繰り広げられた。最終的には、羅真人から伝授された五雷正法の秘奥義をもって喬冽を打ち破り、梁山泊に勝利をもたらした。

しかし、その後の王慶討伐において、公孫勝の活躍は限定的となる。この戦いで夏の暑さに苦しむ味方のために涼風を呼び寄せたのを最後に、彼の物語上での役割は急速に減少していく。

梁山泊からの離脱

公孫勝は、故郷に残した老母のことや、師である羅真人が更なる修行の継続を強く望んでいたことから、梁山泊からの離脱を決意する。これは、方臘討伐のために江南へ向かう直前の出来事であった。契丹との戦いなど、それまでの戦役では百八星の中から一人も欠けることがなかった梁山泊にとって、公孫勝は初めての脱落者となった。この彼の離脱は、その後に続く梁山泊の崩壊を予感させる前触れとも言える出来事であった。

その後

梁山泊が朝廷への帰順を果たし、各地の賊徒を討伐した戦いが終わった後、官職を辞して野に下った朱武や、かつて敵対した妖術使いであった樊瑞が、公孫勝のもとを訪れた。彼らは公孫勝に弟子入りを志願し、共に道術の道を学ぶことになったと伝えられている。

成立史における位置づけ

公孫勝は、『水滸伝』の物語が形成される過程において、比較的後になって登場する人物であると考えられている。南宋末から元初の学者である周密が記した『癸辛雑記』に引用されている龔聖与の「宋江三十六人賛」には、彼の名前は見られない。しかし、時代が下り、『水滸伝』の原型とされる説話集『大宋宣和遺事』においては、宋江たち三十六人の盗賊の中に数えられ、序列六位として登場している。

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