公安機動捜査隊

公安機動捜査隊（公機捜）について

警視庁公安部に所属する公安機動捜査隊、通称「公機捜」は、テロ事件の初動捜査や特殊な鑑識活動、NBCテロ（核物質、生物、化学物質を用いたテロ）対策を専門とする執行部隊です。爆発物を用いたテロ事件やゲリラ事件が発生した際、現場に急行し、初動捜査や証拠収集を行います。また、NBCテロに対する専門的な知識と技術を持ち、高度な専門性と機動力を兼ね備えた精鋭部隊として知られています。

歴史

公機捜の起源は、昭和40年代半ばの過激派による爆弾テロが頻発した時期に、公安総務課内に設置された「特殊班」に遡ります。この特殊班は、爆発物や火炎瓶の採取を専門としていました。その後、「第六担当」と改称され、1989年（平成元年）には、昭和天皇の崩御に伴うデモ隊の撮影などを担当していた「公安特科隊」と合流し、現在の「公安機動捜査隊」として独立しました。

設立当初、隊本部は本庁内にありましたが、テロの標的となる危険性を避けるため、実動部隊の位置は秘匿されていました。出動時には、すぐにサイレンを鳴らさず、現場から離れてから初めて鳴らすという徹底した警戒体制が敷かれていました。その後、隊本部と実動部隊は渋谷警察署内に移転し、さらに現在の目黒へ移転しました。

活動内容

公機捜は、テロ事件発生時には全国どこへでも出動し、初動捜査を行います。海外で大規模なテロが発生した際には、隊員を派遣し、テロ対策の経験を積ませることもあります。過去には、2004年のマドリード列車爆破テロ事件や2005年のロンドン同時爆破事件などにも隊員が派遣されています。また、2011年の福島第一原子力発電所事故では、現場付近に派遣され、放射線量の測定を行いました。

公機捜は、単なる捜査部隊ではなく、NBCテロに関する研究や機材開発も行う「頭脳集団」としての側面も持っています。2003年には、天然痘の判別キットの開発に成功しており、その高い技術力が窺えます。海外派遣や外国製機材の操作も多いため、隊員には高度な英語力が求められます。

また、人質立てこもり事件における犯人との交渉を担当する専門の交渉人も配属されています。これらの交渉人は、警察大学校の「人質立てこもり事件説得交渉専科」で専門的な訓練を受けています。

NBCテロ対策

公機捜には、NBC兵器を用いたテロに対処するための専門部隊「NBCテロ捜査隊」が編成されています。NBCテロ捜査隊は、大学で理化学を専攻した隊員を中心に構成され、NBCテロ発生時には、鑑識活動や証拠採取を行います。この部隊には、化学防護車や化学防護服、放射線防護シート、毒物検知器といった最新鋭の機材が配備されています。

その他の活動

公機捜は、右翼や左翼の街宣活動などで発生する騒音の測定も行います。また、警察庁長官狙撃事件の教訓から、鑑識活動に先端技術を応用するための研究を行う「科学捜査班」の設立も予定されています。

特徴

警視庁公安部は、情報活動を担当するため、捜査員は秘匿性が高く、報道関係者の前に姿を現すことはほとんどありません。しかし、公機捜は例外的に、年頭視閲式やテロ対策訓練などで報道関係者に姿を見せることがあります。2006年11月10日には、東京都で行われた「大規模テロ災害対処共同訓練」で、化学防護服を着用し、証拠品の収集を担当しました。

関連情報

警視庁
機動隊 - 機動隊の中にもNBCテロ対策部隊が存在します。
機動捜査隊 - 刑事部の部隊で、殺人事件などの現場に急行し初動捜査を行います。
警察庁警備局国際テロリズム対策課 - 海外でのテロ事件が発生した際、警察庁が派遣する「国際テロリズム緊急展開班」（TRT-2）には公機捜の隊員が数多く登録されています。


公機捜は、国内外を問わずテロの脅威に対処するため、日々高度な訓練と研究を重ねています。その専門性と機動力は、日本の治安維持に不可欠な存在と言えるでしょう。

もう一度検索