公設試験研究機関

公設試験研究機関とは

公設試験研究機関（略称：公設試）は、地方公共団体が設置する試験所、研究所、指導所などの機関です。これらの機関は、地方の行政目的に沿って、鉱工業、農林水産業の振興、環境保全、保健衛生の向上などを目的とした試験・研究、高度な機器の利用提供、技術指導、教育、相談業務などを行います。

公設試は、地方公共団体の一部である組織から、比較的独立性の高い財団形態のものまで存在し、その範囲は多岐にわたります。国が設置した研究機関は国立試験研究機関（略称：国研）と呼ばれ、公設試とは区別されます。

海外では、食品や薬品分野では公設試の例が見られるものの、鉱工業分野ではあまり一般的ではありません。

公設試の沿革

公設試の歴史は古く、農業系や衛生系の機関は明治時代にまで遡ることができます。鉱工業系の公設試は、日本の産業革命期にあたる1900年頃から各地で設立が始まり、戦後の高度経済成長期にもその設立が相次ぎました。また、環境系の公設試は、高度経済成長期末の公害問題などを受けて設立されたものがあります。

設立当初は、工業試験場、窯業指導所、農業試験場、畜産試験場、水産試験場、林業試験場など、専門分野ごとに細分化された機関として設置されることが一般的でした。また、交通や通信手段が未発達だった時代には、県立の公設試が県内の産業集積地や競争力の高い農産地ごとに分散して設置されることもありました。

しかし、高度経済成長期に交通・通信手段が整備されると、県内に分散していた公設試は、効率的な運用を目指して本所-支所の体制に移行しました。また、国民の環境、製品、食品の安全に対する関心が高まると、公設試には高度な試験設備が必要となり、県内の一箇所に集約される動きも見られました。

環境系や衛生系の公設試は、現在では中規模以下の県で統合され、「県立環境保健センター」という名称になっていることもあります。

2000年以降、国が国立試験研究機関を独立行政法人化する動きに呼応して、いくつかの都道府県や市でも公設試が地方独立行政法人（いわゆる「地独」）となりました。経営の安定化のため、地独化の際に鉱工業系と農林水産系の公設試を合併させる例も見られます。

職員の構成については、戦前は高学歴の幹部職員と職人としての訓練を受けた一般技術職員で構成されていましたが、戦後の高学歴化に伴い、ほとんどの技術系職員が大学卒となりました。1990年代以降は、修士号取得者以上を採用資格とする公設試も増えています。現在では、博士号取得者や技術士の資格を持つ職員も多く、公設試の研究業務の比重が大きくなっていることを示しています。

運営形態

公設試の運営形態は多岐にわたります。

地方公共団体直属型: 地方公務員を職員とし、地方公共団体の直接的な管理下にある形態。
地方独立行政法人型: 法人化されているものの、運営費の交付、運営方針の決定、人事交流などを通じて地方公共団体の強い影響下にある形態。
財団法人型: 地方公共団体の積み立てた基金によって、独自の施設や設備を有する形態。
公設民営型: 地方公共団体が整備した施設や設備を法人が委託を受けて運営する形態。

試験研究設備

各公設試には、研究者と試験機器が配置されています。これらの情報は、各機関ごとに確認できるほか、鉱工業系の主要機関については、経済産業省が提供する検索システムを利用することができます。

公設試の連合組織

公設試は、その所掌分野が多岐にわたるにもかかわらず、職員数が数十人程度の比較的小規模な機関が多く、専門分野の同僚からの助言や指導を得る機会が限られるという課題を抱えていました。このため、国が主導し、国立研究機関が中心となって、公設試の連合組織が設立されています。

主な連合組織は以下の通りです。

鉱工業系:
産業技術連携推進会議（略称：産技連、経済産業省主導、産業技術総合[[研究所]]が運営）
公立鉱工業試験研究機関長協議会（機関長による自主運営）
農林水産系:
食品試験研究推進会議（農林水産省主導、農業・食品産業技術総合研究機構が運営）
全国水産試験場長会（水産庁主導）
全国林業試験研究機関協議会（林野庁主導）
環境系:
全国環境研協議会
保健衛生系:
地方衛生研究所全国協議会

全国公設試一覧

（北海道から沖縄県までの各都道府県の公設試一覧は省略）

まとめ

公設試は、地域社会の発展に不可欠な役割を果たしています。地方自治体と連携し、地域産業の振興、環境保全、住民の健康と安全を支えるため、高度な技術力と専門知識を活かした活動を行っています。これらの機関は、地域の特性やニーズに応じた研究開発や技術支援を通じて、社会の進歩に貢献しています。

参考情報

産業技術連携推進会議
全国環境研協議会
地方衛生研究所全国協議会

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