六人部登

六人部登：日本のモデルガン史に名を刻むデザイナー

六人部登（むとべのぼる、1926年～2004年）は、日本のモデルガン業界において、特筆すべき存在感を放つデザイナーです。彼の名前は、一般的に広く知られているわけではありませんが、トイガン業界に多大な影響を与えたことは間違いありません。現在でも、彼が設計を手掛けたモデルガンやエアソフトガンが、現役で販売されているほどです。

六人部氏の作品の特徴は、何よりも実銃の外観とメカニズムのリアルな再現性を追求している点にあります。作動性能や玩具としての遊びやすさよりも、実銃の精密なコピーを目指した、妥協のない姿勢が見て取れます。この点において、作動性や遊びやすさを重視する傾向の強かった、同時代のデザイナー小林太三氏とは対照的でした。

六人部氏と小林太三氏は、しばしば同じモデルのモデルガンを設計する競作関係にありました。しかし、その作品には両者の設計思想の違いが如実に表れており、「作動の小林、リアルメカの六人部」と称されるほどでした。興味深いことに、彼らはお互いをライバル視するどころか、親交も深めていたようです。小林氏は六人部氏を「物を作る天才」と評しており、両者の間には敬意と友情が芽生えていたことが窺えます。

六人部登の歩み：多様な経験がモデルガン設計に活かされる

六人部氏は1926年、京都府京都市に生まれました。絵画専門学校卒業後、旧日本軍に入隊しますが、終戦によって除隊。その後は、西陣織、塗装、木彫と様々な職を経験し、タンゴミュージシャンとしても活動するなど、多様な人生を送っています。

1962年、中田商店に入社し、モデルガン設計の道へ進みます。その卓越した技術とセンスはすぐに認められ、1967年には独立、六研を設立しました。しかし、1971年の銃刀法改正による規制強化により、ハンドガンのモデルガンは銃腔閉塞が義務づけられ、1977年には六研名義でのモデルガン製造は中止を余儀なくされます。

それでも六人部氏はフリーのデザイナーとして活躍を続け、数々の名作モデルガンを生み出しました。2004年、77歳でこの世を去りましたが、彼の残した作品は、今もなお多くのコレクターや愛好家から高い評価を受けています。

代表作：精密な再現性と独創的なメカニズム

六人部氏の作品を語る上で外せないのが、その高い完成度です。彼のモデルガンは、単なる玩具ではなく、まるで本物の銃器を目の前にしているかのような錯覚すら覚えるほどのリアルさで、多くのファンを魅了しました。

代表的な作品として、中田商店時代の「P08」（亜鉛合金製、独自の指アクションによるトグル作動機構）、六研時代の「ガバメント」（真鍮製、製造時期によって異なるバリエーションが存在）、「ミリタリーポリス」（真鍮製、STDとDXの2種類）、そして「SAA」（真鍮製、複数のバリエーションが存在）などが挙げられます。

その他にも、MGCの「MJQ」（ワルサーP38モデル）、スズキの「M92SB」（ベレッタM92モデル、六人部氏自身のお気に入り作品）、リアルマッコイの「SFM1911」（高級ガバメント）、ランパントコルトの「SAA」など、様々なメーカーのモデルガンを設計しています。中には、設計試作段階で発売に至らなかった作品も存在しますが、それらからも六人部氏の創造性と技術の高さが伺えます。

また、彼は『モデルガンチューンナップ講座』（Gun誌掲載、ペンネーム：ロック戸部）を執筆しており、モデルガンの改造に関する知識も提供しています。

六人部登という名は、多くのモデルガン愛好家の心に深く刻まれた、伝説的なデザイナーの名として、これからも語り継がれていくことでしょう。

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