六供町 (前橋市)
六供町（ろっくまち）は、群馬県前橋市の南部、利根川の左岸に位置する地域です。一丁目から五丁目までがあり、郵便番号は371-0804となっています。
地理的には前橋台地の南部に広がり、東側を利根川が流れています。かつて戦国時代に発生した大洪水によって利根川の流路が大きく変わるまでは、六供町は川の右岸側に位置していたと伝えられています。
この地域には古くから人々が暮らしを営んでいた痕跡が見られます。
縄文時代草創期の土器が町の南にある橳島（ぬでじま）川端遺跡から出土しており、すでにこの時代に人々が生活していたことがうかがえます。弥生時代には、隣接する後閑町の広瀬団地付近から樽式土器を用いた甕棺（かめかん）が出土しています。
古墳時代になると、約2km東には上毛野君（かみつけぬのきみ）にゆかりがあるとされる広瀬・朝倉古墳群が広がり、3世紀後半に造られた県内最古の本格的な古墳である天神山古墳（てんじんやまこふん）なども含まれています。こうした大型古墳の存在は、当時この地域に有力な豪族が存在し、豊かな水田と多くの人々が暮らしていたことを示唆しています。六供町内でも、上毛古墳総覧には寿延寺（じゅえんじ）の近くから4基の円墳があったことが記されており、刀剣や土器が出土しています。また、発掘調査により、下堂木（しもどうぎ）遺跡や中京安寺（ちゅうけいあんじ）遺跡などから古墳時代の住居跡や水田跡が多数見つかっており、六供を含む一帯が当時の前橋の中心地の一つであったと考えられています。
奈良時代には律令制が導入され、条里制を思わせる地名（北の市ノ坪町、南の公田町など）や、発掘された水田跡から、整然と区画された水田が広がっていた様子がうかがえます。また、都と陸奥を結ぶ重要な官道「東山道」（通称「あずま道」）がこの地域を通過しており、箱田、小相木、六供、天川などを経由していました。聖武天皇の命により全国に国分寺が建立された時代、六供町には大門、中京安寺、東京京安寺、堂木といった寺院に関連する小字名が残っています。これは、この地の有力者が「京安寺」と呼ばれる寺院を建立した可能性（8世紀頃か）を示唆しており、その配置は、前橋八幡宮と同様に東の利根川を背にした西向きであったと考えられています。
平安時代には、現在も残る六供八幡宮が創建されたと考えられています。この神社は、当時の主要道であったあずま道に近接していたと推測されています。
戦国時代には、1427年（応永34年）の大洪水によって利根川の流路が大きく変わり、町の東側から西側へと流れるようになりました。また、厩橋城（後の前橋城）を巡る攻防の際、武田・北条軍によって町が焼き払われたという記録も残っています。
江戸時代、六供町は前橋城の南側に広がる豊かな農村として栄えました。上野郷帳集成によると、1668年（寛文8年）には石高438石余りでしたが、その後増加し、1834年（天保5年）には1,059石余りとなっています。これは南部地域の中でも特に石高が多い村の一つであり、寛文年間から前橋藩の領地として発展してきました。
明治維新後、1874年（明治7年）には六供学校が設立されるなど教育環境が整えられ、1878年（明治11年）時点では南部地域の村々の中で最大の規模を有していました。その後、周辺村との合併を経て1889年（明治22年）に東群馬郡上川淵村の一部となります。1901年（明治34年）には上川淵村から分かれて前橋市に編入され、市の町名となりました。大正期には城南小学校が開校し、町の学区となりました。
昭和に入ると、1943年（昭和18年）には上毛撚糸の本社工場ができるなど産業も興りました。戦後、1947年（昭和22年）に戦災復興住宅である生川住宅が建設されたことで人口が増加。1951年（昭和26年）に正式に前橋市六供町となりました。高度経済成長期には、し尿処理場（現在の水質浄化センター）や下水処理場（1962年）が設置されるなど、都市機能の整備が進みました。1971年（昭和46年）には城南小学校が現在地に移転し、六供清掃工場も建設されました。産業面では、1979年（昭和54年）に上毛撚糸工場跡地に市内初の大型商業施設「上毛シルクプラザ」が開設され、町の商業の中心となりました。
平成以降も、1991年（平成3年）に六供清掃工場に温水プールが併設されるなど公共施設の整備が進められています。2023年（令和5年）には土地区画整理事業に伴い、町域の一部が再編され、丁目制が導入されました。
「六供」という地名の由来には諸説伝わっています。源義経が奥州へ落ち延びる際に6人の供がこの地に残ったという説や、小幡城主であった小幡伊勢守忠利が武田信玄に追われ、6人の供とともにこの地に隠れ住んだという伝承が有名です。後者の説に登場する小幡家ゆかりの墓が現存し、現在は寿延寺に安置されています。伝えられる6人の供の姓は、松本、野口、斉藤、高橋、萩原、荒木とされています。
町内には、市の古い八幡宮の一つとされる六供八幡宮があります。創建は大同3年（808年）と伝えられ、度重なる火災や修繕を経て現在の権現造りの社殿となりました。境内には三笠山神社など複数の境内社が祀られています。その他、前橋市立城南小学校、前橋市六供清掃工場および六供温水プール、六供こども公園、あかぎ信用組合本店など、教育・公共・金融・商業などの施設が立地しています。
町内に鉄道駅はありませんが、群馬県道11号線（前橋玉村線）および群馬県道・埼玉県道13号線（前橋長瀞線）が通り、周辺地域や広域へのアクセスを担っています。路線バスも運行されています。
六供町は、縄文時代から現代に至るまで、利根川と共に歴史を刻み、前橋市の発展とともに変化を遂げてきた地域です。古代の中心地としての歴史から、近代以降の都市化、そして近年の整備まで、その歩みは多岐にわたります。
地理
地理的には前橋台地の南部に広がり、東側を利根川が流れています。かつて戦国時代に発生した大洪水によって利根川の流路が大きく変わるまでは、六供町は川の右岸側に位置していたと伝えられています。
歴史
この地域には古くから人々が暮らしを営んでいた痕跡が見られます。
原始・古代
縄文時代草創期の土器が町の南にある橳島（ぬでじま）川端遺跡から出土しており、すでにこの時代に人々が生活していたことがうかがえます。弥生時代には、隣接する後閑町の広瀬団地付近から樽式土器を用いた甕棺（かめかん）が出土しています。
古墳時代になると、約2km東には上毛野君（かみつけぬのきみ）にゆかりがあるとされる広瀬・朝倉古墳群が広がり、3世紀後半に造られた県内最古の本格的な古墳である天神山古墳（てんじんやまこふん）なども含まれています。こうした大型古墳の存在は、当時この地域に有力な豪族が存在し、豊かな水田と多くの人々が暮らしていたことを示唆しています。六供町内でも、上毛古墳総覧には寿延寺（じゅえんじ）の近くから4基の円墳があったことが記されており、刀剣や土器が出土しています。また、発掘調査により、下堂木（しもどうぎ）遺跡や中京安寺（ちゅうけいあんじ）遺跡などから古墳時代の住居跡や水田跡が多数見つかっており、六供を含む一帯が当時の前橋の中心地の一つであったと考えられています。
奈良時代には律令制が導入され、条里制を思わせる地名（北の市ノ坪町、南の公田町など）や、発掘された水田跡から、整然と区画された水田が広がっていた様子がうかがえます。また、都と陸奥を結ぶ重要な官道「東山道」（通称「あずま道」）がこの地域を通過しており、箱田、小相木、六供、天川などを経由していました。聖武天皇の命により全国に国分寺が建立された時代、六供町には大門、中京安寺、東京京安寺、堂木といった寺院に関連する小字名が残っています。これは、この地の有力者が「京安寺」と呼ばれる寺院を建立した可能性（8世紀頃か）を示唆しており、その配置は、前橋八幡宮と同様に東の利根川を背にした西向きであったと考えられています。
平安時代には、現在も残る六供八幡宮が創建されたと考えられています。この神社は、当時の主要道であったあずま道に近接していたと推測されています。
戦国時代には、1427年（応永34年）の大洪水によって利根川の流路が大きく変わり、町の東側から西側へと流れるようになりました。また、厩橋城（後の前橋城）を巡る攻防の際、武田・北条軍によって町が焼き払われたという記録も残っています。
近世・近代
江戸時代、六供町は前橋城の南側に広がる豊かな農村として栄えました。上野郷帳集成によると、1668年（寛文8年）には石高438石余りでしたが、その後増加し、1834年（天保5年）には1,059石余りとなっています。これは南部地域の中でも特に石高が多い村の一つであり、寛文年間から前橋藩の領地として発展してきました。
明治維新後、1874年（明治7年）には六供学校が設立されるなど教育環境が整えられ、1878年（明治11年）時点では南部地域の村々の中で最大の規模を有していました。その後、周辺村との合併を経て1889年（明治22年）に東群馬郡上川淵村の一部となります。1901年（明治34年）には上川淵村から分かれて前橋市に編入され、市の町名となりました。大正期には城南小学校が開校し、町の学区となりました。
昭和に入ると、1943年（昭和18年）には上毛撚糸の本社工場ができるなど産業も興りました。戦後、1947年（昭和22年）に戦災復興住宅である生川住宅が建設されたことで人口が増加。1951年（昭和26年）に正式に前橋市六供町となりました。高度経済成長期には、し尿処理場（現在の水質浄化センター）や下水処理場（1962年）が設置されるなど、都市機能の整備が進みました。1971年（昭和46年）には城南小学校が現在地に移転し、六供清掃工場も建設されました。産業面では、1979年（昭和54年）に上毛撚糸工場跡地に市内初の大型商業施設「上毛シルクプラザ」が開設され、町の商業の中心となりました。
平成以降も、1991年（平成3年）に六供清掃工場に温水プールが併設されるなど公共施設の整備が進められています。2023年（令和5年）には土地区画整理事業に伴い、町域の一部が再編され、丁目制が導入されました。
地名の由来
「六供」という地名の由来には諸説伝わっています。源義経が奥州へ落ち延びる際に6人の供がこの地に残ったという説や、小幡城主であった小幡伊勢守忠利が武田信玄に追われ、6人の供とともにこの地に隠れ住んだという伝承が有名です。後者の説に登場する小幡家ゆかりの墓が現存し、現在は寿延寺に安置されています。伝えられる6人の供の姓は、松本、野口、斉藤、高橋、萩原、荒木とされています。
主な施設
町内には、市の古い八幡宮の一つとされる六供八幡宮があります。創建は大同3年（808年）と伝えられ、度重なる火災や修繕を経て現在の権現造りの社殿となりました。境内には三笠山神社など複数の境内社が祀られています。その他、前橋市立城南小学校、前橋市六供清掃工場および六供温水プール、六供こども公園、あかぎ信用組合本店など、教育・公共・金融・商業などの施設が立地しています。
交通
町内に鉄道駅はありませんが、群馬県道11号線（前橋玉村線）および群馬県道・埼玉県道13号線（前橋長瀞線）が通り、周辺地域や広域へのアクセスを担っています。路線バスも運行されています。
六供町は、縄文時代から現代に至るまで、利根川と共に歴史を刻み、前橋市の発展とともに変化を遂げてきた地域です。古代の中心地としての歴史から、近代以降の都市化、そして近年の整備まで、その歩みは多岐にわたります。
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