六信

イスラーム教スンナ派において、信者の信仰生活の基盤となる重要な概念に「六信（ろくしん）」があります。これは、ムスリム（イスラーム教徒）が信じなくてはならない6つの信仰箇条を指し、五行（イスラームにおける実践上の五つの義務）とともに、イスラーム信仰の根幹を成すものです。

六信は、クルアーン（イスラーム教の聖典）の至る所に散りばめられた教えを統合したものであり、クルアーンの単一の箇所に六信全てが明示的に記されているわけではありません。しかしながら、第2章177節や第54章49節など、六信の要素に言及している箇所が複数存在します。これらの節を総合的に解釈することで、六信の全体像が明らかになります。

六信の内容は、以下の通りです。

1. アッラーへの信仰：唯一神アッラーの存在と絶対性を信じること。アッラーは全能にして慈悲深く、宇宙万物を創造し、支配する唯一の存在です。アッラー以外に神は存在せず、アッラーへの絶対的な信仰がイスラームの根本原則です。

2. 天使たちへの信仰：アッラーの創造物であり、アッラーの命令を忠実に実行する天使たちの存在を信じること。天使たちは、人間には見えない存在ですが、アッラーの意思を伝える重要な役割を担っています。ガブリエル（ジブリール）やミハイル（ミカーイール）などが代表的な天使です。

3. 天啓への信仰：アッラーが預言者たちを通して人間に下した啓典（天啓）を信じること。特に、最後の預言者であるムハンマドへの啓典であるクルアーンは、イスラーム教徒にとって最も重要な聖典です。クルアーンはアッラーの言葉であり、信仰生活の指針となります。

4. 預言者たちへの信仰：アッラーが人間に遣わした預言者たちを信じること。アダム、ノア、アブラハム、モーセ、イエスなど、多くの預言者がアッラーの言葉を伝え、人々を導きました。最後の預言者であるムハンマドは、アッラーの最終的な啓典であるクルアーンを授かりました。

5. 来世への信仰：死後の審判と天国・地獄の存在を信じること。人間は死後、アッラーの前に立ち、その行いが裁かれます。善行を積んだ者は天国へ、悪行を積んだ者は地獄へ行くことになります。来世への信仰は、現世における善行の励みとなります。

6. 定命への信仰：全てはアッラーの定命（運命）であると信じること。人生における出来事、喜びや悲しみ、成功や失敗、全てはアッラーの計画に基づいて起こると信じます。この信仰は、困難な状況においても、アッラーへの信頼を保つ助けとなります。

一方、シーア派イスラームでは、六信ではなく五信（アッラー、天使、天啓、預言者、来世）が信仰の基礎となっています。これは、シーア派とスンナ派の間で、宗教解釈に違いがあるためです。

六信は、イスラーム信仰の核心をなす重要な概念です。これらの信仰箇条を理解することは、イスラーム教を正しく理解するために不可欠です。

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