六畳の生涯

六畳の生涯

松本清張による小説『六畳の生涯』は、1970年から1971年にかけて『週刊朝日』で連載された後、1971年に中編集『生けるパスカル』に収録されました。物語は80歳を迎えようとしている志井田博作の人生を中心に展開され、特に彼の日常生活における変化と、家政婦の吉倉トミとの関わりが重要なテーマとなります。

物語の背景とあらすじ

志井田博作は、長野県内で開業医としてのキャリアを持ちながら、今は隠居生活を東京で送っています。彼は息子の正夫とその妻である望子と同居しているものの、正夫は医者としての職務に追われ、望子とのコミュニケーションも乏しい状況です。博作はようやく一人の時間を持つようになり、裏の六畳間で静かに過ごしています。

やがて、博作の生活に新たに現れたのが家政婦の吉倉トミです。34歳のトミは、博作にとって身の回りの世話をしてくれる存在でありながら、彼女の気遣いが博作の心を惹きつけることになります。しかし、博作の心はトミに次第に向かい、彼女を口説きかけるまでに至ります。トミもまた、以前の手伝い先から離れ、一時的に志井田家を離れることになります。

博作はトミの行き先を追い求め、彼女の実家や行く先を探索し始めます。日々の生活の中で、博作はトミと共に新たな生活を築くことを夢見始めますが、彼の心の中には不安や葛藤も隠されているのです。彼の動向には、志井田医院での計画も含まれており、物語は次第に彼の思いがけない展開へと進んでいきます。

評価とメディア展開

本作は、文芸評論家の進藤純孝によって「読み方で妙味の限りなく出てくる作品」と評されています。この言葉からも、作品の深い意味や表現が読み手によって様々に解釈されることが示唆されています。

さらに、1987年には本作を基にしたテレビドラマも制作されました。「松本清張サスペンス・六畳の生涯」というタイトルで、読売テレビと日本テレビ系列で放送されました。このドラマは第25回ギャラクシー賞奨励賞を受賞しており、視聴率は25.4%と高い評価を得ました。

キャスト

ドラマ版では、植木等が志井田博作を演じ、ちあきなおみが望子役、宮下順子がトミ役を担っています。そのほか、中島ゆたか、清水章吾など多彩なキャストが作品を彩りました。脚本は大野靖子、監督は富本壮吉が担当し、音楽には鏑木創が関わっています。

結論

松本清張の『六畳の生涯』は、老いた主人公が新たな恋と生活を求め、内面の葛藤を抱えながら歩み続ける姿を描いた作品です。ドラマの成功も相まって、今なお多くの読者や視聴者に愛され続けています。

もう一度検索