共同実施

共同実施（JI）とは？

共同実施（Joint Implementation、JI）とは、先進国が互いに協力して温室効果ガス排出量削減または吸収量増加事業を行い、その成果を参加国間で配分する国際的な制度です。京都議定書の第6条に規定されており、温室効果ガス削減の柔軟性メカニズムの一つとして位置付けられています。これは、EU諸国の導入する「共同達成」とは異なる制度です。

JIの目的と効果

JIの主な目的は、先進国間の技術や資金の差を活かし、世界全体の温室効果ガス削減を促進することです。具体的には、以下の効果が期待されています。

削減ポテンシャルの最大化: 技術的に削減が進んでいる国でも、費用対効果の高い削減策を他国で実施することで、より効率的な削減を達成できます。
資金・技術の循環: 資金力のある国が技術力のある国を支援することで、両国の削減目標達成を容易にします。
* 技術革新の促進: 国際協力を通じて、新たな削減技術の開発や普及が加速します。

JIでは、削減された排出量は「排出削減単位（ERU）」として計上され、参加国間で配分されます。これは、自国の削減目標達成に貢献することになります。

JIとCDMとの違い

JIとよく比較されるのがクリーン開発メカニズム（CDM）です。どちらも排出削減量を国際的に取引できる仕組みですが、JIは先進国間、CDMは先進国と途上国間の協力という点が大きく異なります。一般的に、CDMの方が費用対効果が高く、JI事業の数はCDMに比べて少ない傾向にあります。

JI事業の流れ

JI事業は、大きく分けて「第1トラック」と「第2トラック」の2つのプロセスがあります。これは、事業を受ける国の満たすべき条件によって異なります。

第1トラック: すべての条件を満たす国は、簡素化された手続きで事業を進めることができます。削減量の算出やERUの発行は、事業実施国自身が行います。

第2トラック: 最低限の条件を満たす国は、CDMに類似した、より複雑な手続きを経ます。プロジェクト設計書（PDD）の作成、政府への承認申請、認定独立組織（AIE）による審査などが必要となります。

いずれのプロセスにおいても、事業主体は温室効果ガスの排出量をモニタリングし、AIEの審査を経て削減量が決定されます。その削減量に応じて、認証排出削減量（CER）が発行され、参加国間で配分されます。

共同実施監督委員会（JISC）

JIの運用を監督する組織として、共同実施監督委員会（JISC）が存在します。JISCは、AIEの認定、制度の修正、COP会合への報告などを行い、JI事業の健全な運営に貢献しています。

プロジェクト設計書（PDD）

JI事業においては、CDMのPDDを参考に作成されたプロジェクト設計書（PDD）が必要となります。プロジェクト概要、方法論、期間、環境評価、利害関係者への配慮など、規定事項を詳細に記述する必要があります。

JIの現状と課題

JIは、京都議定書以降、様々な課題や変更を経てきました。その運用は、COP会合での議論やJISCの活動によって継続的に見直されています。今後の国際的な気候変動対策において、JIがどのような役割を果たしていくのか注目されます。

まとめ

共同実施（JI）は、先進国間の協力による温室効果ガス排出削減の重要な仕組みです。CDMとの違い、事業の流れ、関連組織などを理解することで、国際的な気候変動対策への理解が深まります。JIは、今後、より効率的で効果的な気候変動対策に貢献していくことが期待されます。

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