クリーン開発メカニズム

クリーン開発メカニズム（CDM）とは何か？

クリーン開発メカニズム（Clean Development Mechanism、CDM）は、先進国が開発途上国における温室効果ガス削減・吸収量増加事業を支援し、その成果を自国の排出量削減目標達成に活用できる国際制度です。京都議定書第12条に規定され、京都メカニズム（柔軟性措置）の一つとして位置付けられています。

具体的には、先進国（附属書I締約国）が開発途上国（非附属書I締約国）で実施される再生可能エネルギー導入や省エネルギー化などの事業に資金や技術を提供します。その結果得られた温室効果ガスの排出削減量（認証排出削減量：CER）は、一定の基準を満たせば、先進国の排出量削減実績として認められます。

CDMの目的と効果

CDMの主な目的は、以下の3点です。

1. 途上国の持続可能な開発の促進: 先進国の技術・資金を途上国に導入することで、経済発展と環境保全を両立する開発を支援します。
2. 地球規模での温室効果ガス削減量の増加: 先進国だけでは達成が困難な大規模な排出量削減を、途上国の協力を得て実現します。
3. 先進国の温室効果ガス削減の容易化: 先進国は、国内での削減よりも費用対効果の高い途上国での削減事業への投資を通じて、自国の削減目標を達成しやすくなります。

CDMは、途上国への技術移転、投資促進、南北問題の軽減といった副次的な効果も期待されています。しかし、先進国の技術革新の停滞やCDMの濫用といった懸念も存在し、国際的な議論が続けられています。

CDM事業の流れ

CDM事業は、以下の手順で行われます。

1. 事業提案と計画策定: 先進国（投資国）と開発途上国（受入国）の事業主体が共同で、プロジェクト設計書（PDD）を作成します。PDDには、事業の概要、方法論、環境影響評価などが記載されます。
2. 承認手続き: PDDは、投資国と受入国の指定国家機関（DNA）に提出され、承認を得ます。その後、第三者機関（指定運営組織：DOE）による有効性審査が行われます。
3. 登録: 審査を通過したプロジェクトは、UNFCCC事務局を通じてCDM理事会に登録されます。登録料の支払いが求められます。小規模な事業については手続きが簡略化されます。
4. 事業実施とモニタリング: 事業主体は事業を実施し、温室効果ガス排出量のモニタリングを行います。DOEは定期的にモニタリング結果を審査します。
5. CERの発行と配分: 削減量に応じてCDM理事会はCERを発行し、事業主体間で配分されます。投資国に配分されたCERは、その国の排出量削減実績として認められます。

プロジェクト設計書（PDD）

PDDには、プロジェクトの概要、方法論、プロジェクト期間、環境評価、利害関係者の意見などが記載されます。「方法論」は、CDM事業による排出量削減効果を算出するための理論的な根拠であり、すでに承認されている方法論を用いるか、新規の方法論を承認してもらう必要があります。また、「クレジット期間」はCERを発行する期間で、7年間を基本とし、最大21年間まで延長可能です。

CDMの現状と課題

2010年4月時点では、約2170件のCDMプロジェクトが登録され、約4億700万単位のCERが発行されています。京都議定書第1約束期間（2012年まで）の目標は13億単位のCERでしたが、達成には至りませんでした。

CDMは、途上国の開発と地球規模の排出量削減に貢献する一方、濫用や先進国の技術革新停滞などの課題も抱えています。今後のCDMのあり方については、国際的な議論が継続されています。

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