典鑰

典鑰（てんやく）について

典鑰とは、律令制において中務省に所属する特定の品官のことであり、和訓では「かぎのつかさ」と表記されます。この役職は、日本の古代国家体制において重要な役割を担っていました。特に、典鑰は倉庫の鍵の管理を行う専門職であり、その職掌は非常に厳格に定められていました。

歴史的背景

典鑰という職名は、『日本書紀』において持統天皇7年（693年）に初めて言及されています。このことから、典鑰の存在は飛鳥浄御原令期に遡ることができると考えられています。当時、典鑰は監物と連携し、中務省に所属する倉庫の主鍵を管理していました。

職務内容

典鑰の主な役割は、毎朝参内して後宮の十二司から鑰（鍵）を受け取り、これを保管することでした。この鑰は非常に重要なもので、必要に応じて監物に渡したり返納したりして、夕方にはまた十二司に返却される仕組みでした。役職間の厳密な役割分担が特徴であり、典鑰は単に鍵を管理するだけでなく、鍵の受け渡しも厳格に行われていました。

具体的には、典鑰は鍵の管理を行う一方で、それを受け取った監物が鍵の出納や開閉を担当していました。これにより、鍵の管理と出納が明確に分かれており、職務の混同がないように工夫されていたのです。このように、典鑰は重要な鍵の管理を通じて、国家の物資や資源の安全と効率的な管理に寄与していたと言えるでしょう。

職員構成

典鑰のポジションは、以下のように分類されていました。具体的には、大典鑰と少典鑰の二つのグレードが存在しました。

• - 大典鑰（従七位下）：2名の職員がこの高位の役職に就いており、重要な決裁や管理に関わっていました。
• - 少典鑰（従八位上）：こちらは2名で、補佐的な役割を担っています。

このようにして、典鑰は中務省の中で特殊な役割を果たしていたことがわかります。古代の日本において、物資の管理や国家機能の維持は非常に重要であり、そのために設けられた役職が典鑰であったのです。

関連項目

典鑰についての理解は、日本の官制や古代国家の制度を知る上で重要な要素です。日本の官制は、さまざまな官職やそれぞれの職務を定めることで、国家の機能を円滑に運営していました。典鑰の役割も、その一部として歴史的な文脈の中で位置づけられています。

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