内モンゴル人民共和国

内モンゴル人民共和国とは

内モンゴル人民共和国は、1945年、第二次世界大戦終結直後に、中国の内モンゴル自治区の一部に短期間存在した独立政権です。この政権は、日本の敗戦によって崩壊した蒙古聯合自治政府の後継として誕生しました。しかし、その独立は長くは続かず、最終的には中国共産党の影響下に入り、消滅しました。

成立の背景

1945年8月、日本の敗戦により蒙古聯合自治政府が崩壊すると、ソ連・モンゴル連合軍がこの地域に進駐しました。自治政府に協力していた人々は、国民党による処罰を恐れ、ソ連・モンゴル連合軍の保護を求めてモンゴル国境へと移動しました。その結果、自治政府は事実上、機能を停止しました。

そのような状況下、1944年にモンゴル人民共和国への併合を目指して組織されたモンゴル青年革命党は、国民党支配下での漢民族優遇政策を危惧していました。彼らは、自治政府の高官たちと共に内モンゴル臨時人民委員会を結成し、モンゴル政府に対して内外モンゴルの統一を要求しました。しかし、ヤルタ会談での合意により、ソ連は中国の内政に関与しないと定められていたため、モンゴル政府は併合を拒否しました。

独立宣言と挫折

モンゴル政府からの支援を得られない中、自治政府高官と青年革命党は協力し、ソニド右旗で人民代表大会を開催しました。その結果、内モンゴル人民共和国臨時政府が樹立され、内モンゴルの独立が宣言されました。さらに、臨時憲法も発布され、正式な国家としての体裁を整えようとしました。独立した内モンゴル人民共和国は、ソ連とモンゴルからの独立承認と経済・軍事援助を求めました。また、モンゴルのラジオ局を通じて独立を宣伝することを依頼しましたが、いずれも拒否されました。

中国共産党との連携

ソ連とモンゴルからの援助が期待できなくなった内モンゴル人民共和国に対し、チョイバルサンは中国共産党との連携を指示しました。中国共産党のモンゴル人幹部であるウランフは、共産党政権下での民族自治を宣伝し、また青年革命党に対しては自治政府高官の反民族的行為を宣伝するなど、政権内部の切り崩し工作を展開しました。その結果、再選出された閣僚名簿では、ウランフが主席兼国防大臣に就任し、政権の実権を掌握しました。

消滅

ウランフは、物資不足を理由に内モンゴル人民共和国臨時政府を張家口へ遷都させました。政府機関が張家口に移転した時点で、ウランフは内モンゴル人民共和国の解散を宣言し、後事を中国共産党に一任する方針を発表しました。その後、ウランフは東モンゴル自治政府と統合して内モンゴル自治運動連合会を組織し、青年革命党は共産党に吸収され消滅しました。内モンゴル人民共和国は、その短い歴史に幕を閉じ、その領土は中国共産党の支配下となりました。

まとめ

内モンゴル人民共和国は、独立を目指したものの、国際情勢の複雑さや内部の対立によって短期間で消滅した政権でした。その歴史は、民族自決の難しさや、大国間の力関係が小国の運命を左右する現実を物語っています。

参考文献

ボルジギン　フスレ 『中国共産党・国民党の対内モンゴル政策（1945〜1949年）』（風響社 2010年）
内蒙古社会科学院歴史研究所編 『蒙古族通史』（民族出版社　2001年）

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