内原電留線

内原電留線（うちはらでんりゅうせん）は、JR東日本が茨城県水戸市三湯町に設置している鉄道車両用の留置線群、いわゆる電留線です。主に常磐線で使用される車両や、水郡線の一部車両の停車、清掃、点検・整備といった日常的なケアを行うための拠点として機能しています。

設立の背景

この電留線の敷地は、かつて1944年（昭和19年）に軍事的な要請から設けられた「内原操車場」の跡地の一部を活用しています。戦時下、水戸駅に集中していた貨物輸送の分散や、増加する列車本数への対応、そして空襲からの被害を避ける目的で開設されたこの操車場の広大な敷地を、鉄道施設の近代化に合わせて再利用したものです。当初、2005年（平成17年）に小規模な電留線が整備された後、翌2006年（平成18年）3月18日には、水戸駅周辺にあった車両留置機能の一部を移管・集約する形で現在の内原電留線が本格的に稼働を開始しました。

構造と機能

内原電留線は、かつて広大な操車場だった名残として、JR常磐線の上下本線に挟まれるような独特の配置となっています。敷地の全体ではなく、内原駅に近い側のエリアが主に使用されており、車両の出し入れ（入出区）は、専ら内原駅の構内にある中線を経由して行われます。友部駅方面からの直接的な出入りはできません。構内に入ると、線路は大きく二方向に分岐します。一方は車両を停めておくための留置線エリア、もう一方は車両の点検や簡易な修理を行うための整備線エリアです。

留置線エリア: こちらには合計7本の線路が敷設されており、多くの車両を一夜または日中に停めておくことができます。そのうち、北側に位置する3番線には車両の外部を洗浄するための専用の台座が設けられており、日常的な清掃作業が行われています。
整備線エリア: こちらは1本の線路からなり、車両の基本的な整備、特に車輪の形状を整える「車輪転削」という作業を行うための施設があります。ここには1両分の車両が収容できる程度の小規模な検修庫が設けられており、構内での車両移動に用いられる小型牽引車「アント」が常に待機しています。
* 併設施設: 電留線の敷地内には、JR東日本の社員向けの訓練施設である「内原設備訓練センター」も併設されています。ここでは、線路保守に関する様々な技能訓練が行われており、実践的な訓練のためにZ字状に配置された訓練用側線、事務所となる本屋、訓練用の検修庫、そして訓練用の踏切といった設備が設けられています。

入庫車両

この電留線に主に収容されるのは、JR東日本の勝田車両センターに所属する常磐線用の電車たちです。具体的には、E531系（基本編成・付属編成）、E657系といった特急形電車、そしてE501系（基本編成・付属編成）などが日常的に利用しています。また、常磐線の特別企画列車などで運行される際には、勝田車両センター所属のE653系電車が入線することもあります。加えて、通常は水郡線で運用されているキハE130系気動車も、車輪転削などの定期的なメンテナンスが必要な場合に限り、水戸駅からこの内原電留線まで臨時回送列車として入庫します。かつて、水郡線の車両の車輪転削は、現在の水戸ORS（オフレールステーション）に隣接する水郡線専用の留置線で行われていましたが、現在はその機能も内原電留線に移されています。

位置関係

JR常磐線の内原駅と友部駅の間に位置しており、形式的には友部駅 - 内原電留線 - 内原駅という線路配置になっています。しかし前述の通り、車両の出入りは内原駅の構内を通じてのみ行われるため、友部駅側からの直接的なアクセスは構造上不可能です。

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