内灘闘争

内灘闘争：戦後日本の記憶を刻む抵抗の歴史

内灘闘争は、第二次世界大戦後の混乱期、石川県河北郡内灘村（現在の内灘町）で繰り広げられた、アメリカ軍の試射場建設に対する激しい反対運動です。この闘争は、単なる地域紛争にとどまらず、戦後日本の在り方や米軍基地問題、そして住民自治の重要性を問いかける、歴史的に重要な出来事として記憶されています。

戦争の余波と試射場の選定

1952年（昭和27年）、朝鮮戦争の激化に伴い、アメリカ軍は国内で製造される砲弾の性能を試験するための試射場を必要としていました。その候補地として、長い海岸線を持つ静岡県の御前崎周辺と、内灘砂丘が浮上しました。最終的に、同年11月25日、内灘が試射場として閣議決定されます。しかし、この決定は地元住民の意思を無視したものであり、内灘村議会は直ちに反対決議を採択、村全体が闘争へと突き進んでいくことになります。

住民の抵抗と連帯の輪

内灘の住民たちは、自分たちの生活基盤である砂丘が、アメリカ軍の演習場となることに激しく反発しました。北陸鉄道労組は、資材搬入に対するストライキで支援を表明し、この闘争は地域を越えた連帯運動へと発展していきます。また、元陸軍大佐で当時衆議院議員であった辻政信も闘争を支援、その姿は写真にも残されています。

政府は、石川県選出の参議院議員である林屋亀次郎を接収担当の国務大臣に任命し、補償金1億円と使用期間4ヶ月という妥協案を提示しますが、住民の反対は収まりませんでした。1953年の第3回参議院選挙では、接収反対を訴えた井村徳二が、林屋を破り当選。この選挙戦は、「武蔵大和の日本海決戦」とまで呼ばれ、激しい戦いとなりました。選挙結果は、内灘住民の強い意志を示すものでした。

闘争の終結と遺産

内灘闘争は、1957年1月31日に試射場が返還され、アメリカ軍が撤収したことで終息しました。しかし、その爪痕は「鉄板道路」や、着弾地観測場遺跡など、今もなお内灘の地に残されています。着弾地観測場は、試射場から発射された砲弾の着弾を確認するために作られた石造りの建物で、別名O・P（オブザベーション・ポスト）と呼ばれていました。現在は、外壁の一部が崩れ、鉄扉も朽ち果てていますが、内部は比較的良好な状態で、当時の面影を今に伝えています。

内灘闘争を題材にした作品群

内灘闘争は、多くの人々に影響を与え、文学や映画など様々な形で表現されてきました。歌集『内灘』は、著者が闘争に参加した経験を詠んだものであり、映画『非行少女』では、闘争に巻き込まれた少女とその家族の物語が描かれています。また、小説『内灘夫人』は、闘争に関わった学生たちのその後を、『砂冥宮』では、闘争が事件解決の鍵となるミステリーとして描かれています。

年表

1953年
3月18日：内灘砂丘にて米軍による試射開始
4月17日：石川県評が米軍試射場奪還県民大会を開催
4月28日：石川県内各種団体による内灘接収反対実行委員会が結成
6月2日：内灘試験場の継続使用を閣議決定
6月3日：内灘村民大会絶対反対宣言
6月14日：内灘村民が権現森で座り込みを行う
6月15日：米軍試射再開
9月8日：内灘村長にリコール請求書を提出、同年10月15日に村長が辞職
1956年12月5日：米軍内灘試射場隊長、年内を以て試射終了を通告
* 1957年3月30日：内灘試射場が正式に返還される

まとめ

内灘闘争は、戦後日本の民主主義と平和を求める人々の闘いの象徴として、今もなお私たちの心に深く刻まれています。この闘争は、私たちに、過去の歴史から学び、未来へと繋げる重要性を教えてくれます。

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