内藤忠勝

内藤忠勝

内藤忠勝は、江戸時代前期に志摩鳥羽藩の第3代藩主を務めた人物です。第2代藩主内藤忠政の次男として生まれました。

家督相続

寛文11年（1671年）、兄の忠次が家督を継ぐことを固辞したため、忠勝が嫡子となりました。この背景には、忠次の病気や精神的な問題があったのではないかという説もあります。寛文13年（1673年）には父の死去に伴い、正式に家督を相続しました。同時に、弟の忠知に2000石を分与しています。

増上寺刃傷事件と切腹

延宝8年（1680年）、4代将軍徳川家綱の七十七日法要の際、忠勝は芝増上寺の参詣口門の警備を命じられました。この時、同じく警備を命じられていた永井尚長との間に事件が起こります。

永井尚長は、忠勝より身分が上であることを理由に、老中からの指示を記した奉書を忠勝に見せることなく立ち去ろうとしました。これに対し、忠勝は奉書を見せるように求めましたが、尚長はこれを無視。この行為に激怒した忠勝は、脇差を抜いて尚長に詰め寄り、逃げる尚長の長袴を踏み、転倒したところを刺殺するという事件を起こしました。これが「芝増上寺の刃傷事件」として知られています。

事件後、忠勝は遠山頼直に拘束され、伊奈忠易のもとに預けられました。そして、同年6月27日、西久保の春龍寺において切腹を命じられ、内藤家は断絶となりました。享年26歳という若さでした。

人物像と諸説

忠勝の性格については、短気で癇癪持ちであったという説があります。この性格が、増上寺での刃傷事件につながったと考えられています。また、興味深いのは、忠勝の甥（姉の子）にあたる播磨赤穂藩主の浅野長矩が、21年後に同様の事件（赤穂事件）を起こし、同じく切腹という末路をたどったことです。

この二人の共通点に着目し、書籍『江戸トンデモ殿さま列伝』では、内藤家の遺伝的な要素が長矩に受け継がれたのではないかと考察しています。内藤家は精神疾患を抱える者が多かったという説もあり、忠勝の兄・忠次が家督を辞退したのも、精神的な障害が理由だったのではないかという推測も存在します。そして、忠勝自身もまた、そうした障害を抱えていた可能性が指摘されています。

まとめ

内藤忠勝は、若くして藩主となりましたが、その短気な性格が災いし、増上寺での刃傷事件を引き起こしてしまいました。この事件は、内藤家の断絶を招いただけでなく、甥の浅野長矩による赤穂事件との関連性を指摘されるなど、後世に様々な影響を与えました。彼の生涯は、武士の家柄や精神的な問題を考える上で、重要な事例の一つと言えるでしょう。

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