再生 (生物学)

生物学における再生

生物学における再生とは、損傷した組織や器官、四肢などが元の状態に復元する現象を指します。この再生能力は生物によって大きく異なり、中には、体の一部から全身を再生できる生物も存在します。

再生のメカニズム

再生の過程では、まず損傷部位に未分化な細胞の塊である再生芽が形成されます。この再生芽を構成する細胞は、幹細胞や、一度分化した細胞が脱分化（未分化な状態に戻ること）や分化転換を経て増殖します。この細胞増殖と分化によって、失われた組織や器官が再構築されます。

この再生のメカニズムは、発生生物学の分野でも重要なテーマとして研究されています。特に、再生における細胞の分化や、体軸の極性（頭部と尾部の区別など）の決定は、発生過程における細胞の挙動を理解する上で非常に重要な手がかりとなります。

再生の種類

再生には、大きく分けて以下の2つの種類があります。

付加再生 (Epimorphosis)：損傷部位に再生芽が形成され、細胞増殖と分化によって組織や器官が再生する。
再編再生 (Morphallaxis)：既存の組織が再編成され、全体の形が修復される。

モデル生物を用いた再生研究

再生研究には、再生能力の高い様々な生物がモデル生物として利用されています。

プラナリア：非常に高い再生能力を持つ扁形動物。体の一部から全身を再生できる。
ヒドラ：刺胞動物の一種で、体の一部から全身を再生できる。
イモリ：両生類で、四肢や尾、水晶体などの再生が可能。

これらのモデル生物を用いた研究により、再生のメカニズムが徐々に解明されてきました。例えば、プラナリアの研究から、体の極性（頭尾軸）が再生を制御する重要な因子であることが示唆されました。

各論

節足動物

節足動物では、脱皮の際に四肢などが再生します。不完全変態昆虫では、幼虫期に四肢を再生することができます。

プラナリア

プラナリアは、非常に高い再生能力を持つ扁形動物であり、再生研究のモデル生物として古くから研究されてきました。プラナリアには、多数の幹細胞が存在し、切断されると、切断部に幹細胞が集まり再生芽を形成します。この再生芽が分化することで、失われた部位が再生されます。

両生類

両生類もまた、非常に高い再生能力を持つ生物であり、イモリなどが研究対象とされてきました。イモリは、四肢や尾、水晶体などの複雑な組織を再生することができます。イモリの四肢を切断すると、切断部周囲の細胞が脱分化し、再生芽を形成します。この再生芽が分化することで、失われた四肢が再生します。

その他の研究対象生物

その他、以下のような生物も再生研究の対象となっています。

ヒトデ：体の一部から全身を再生できる。
鹿：枝角が何度も再生する。
植物：傷口にカルスが形成され、茎や葉が再生する。

再生研究の応用

再生研究は、再生医療や組織工学といった分野への応用が期待されています。例えば、ヒトの損傷した組織や器官を再生する技術の開発や、再生能力を失った細胞や組織を活性化させる治療法の開発などが研究されています。

関連項目

新陳代謝
組織工学
再生医学
ヒトの再生能力
創傷治癒
移植
過形成
骨再生誘導法
* 幹細胞治療

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