再販売価格維持

再販売価格維持制度：解説と各国事情

再販売価格維持制度（再販制度）とは、製造業者や卸売業者が、小売業者に対して商品の再販売価格をあらかじめ指定し、その遵守を求める制度です。これは、生産者から消費者までの流通過程における価格を、供給側がコントロールしようとする試みです。

再販制度の仕組みと法的側面

再販制度では、メーカーが小売業者と再販売価格維持契約を締結します。契約では、小売業者がメーカーが指定した価格で商品を販売することが義務付けられます。この制度は、自由競争を阻害し、消費者の利益を損なう可能性があるため、多くの国では独占禁止法によって原則禁止されています。

しかし、例外的に、書籍、雑誌、新聞、音楽ソフトなど、文化的な側面が強い商品については、再販制度が認められている国もあります。これらの商品においては、一定の価格を維持することで、品質や多様性の維持、文化の保護といった効果が期待できるためです。

日本の場合、独占禁止法で原則禁止されていますが、著作物（書籍、雑誌、新聞、音楽ソフトなど）と公正取引委員会が指定する一部商品については、例外的に再販行為が認められています。ただし、再販売価格維持契約を締結し、公正取引委員会への届け出が必要となります。また、委託取引の場合、一定の条件を満たせば違法とはみなされません。

再販制度の効果と影響

再販制度は、メーカーと小売業者、そして消費者それぞれに影響を与えます。

メーカー・小売業者への影響

メーカー: 安定した利益を確保できる、ブランドイメージ維持に繋がる。しかし、市場の需要変化への対応が遅れる可能性がある。
小売業者: 価格競争から解放される、最低限の利益が保証される。しかし、独自の価格戦略が制限される、販売数量減少のリスクがある。

消費者への影響

価格が上昇する可能性がある、価格競争が起こらず選択肢が少なくなる。しかし、品質やサービスの安定性を期待できる場合もある。

社会全体への影響

需要と供給のバランスが崩れる可能性がある、市場の効率性が低下する可能性がある。

各国の再販制度

各国で再販制度の状況は異なります。

日本: 著作物と公正取引委員会が指定する一部商品に限定的に認められている。時限再販や部分再販などの柔軟な運用も認められている。
イギリス: かつては書籍に適用されていたが、現在は廃止され、返品条件付き売買が主流。
フランス: 書籍に再販制度が存在するが、値引き販売が一定範囲で認められている。
ドイツ: 書籍、雑誌、新聞に適用されているが、出版社が一定の価格設定の自由度を持っている。
韓国: かつては書籍に適用されていたが、現在は廃止されている。

再販制度の課題と将来展望

再販制度は、自由競争と消費者の利益を確保するという観点から、常に議論の対象となっています。近年では、インターネットの普及や電子書籍の登場によって、再販制度の維持が困難になりつつあることも指摘されています。

特に、電子書籍においては、在庫リスクや返品リスクが軽減されるため、再販制度の適用は難しく、出版社による直接販売や販売業務委託契約が主流になりつつあります。

今後、再販制度は、市場環境の変化や消費者のニーズに対応した柔軟な運用が求められるとともに、その是非に関する継続的な議論が不可欠です。

参考文献

公正取引委員会 『流通・取引慣行に関する独占禁止法上の指針』 1991年
木下修『書籍再販と流通寡占』アルメディア、1997年
金子晃・高橋岩和 『英国書籍再販崩壊の記録-NBA違法判決とヨーロッパの再販状況』 文化通信社、1998年11月
小田光雄 『出版社と書店はいかにして消えていくか』 ぱる出版、1999年6月

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