写真花嫁

写真花嫁：歴史と背景

写真花嫁とは、主に20世紀初頭に日本や韓国からアメリカ（特にハワイ）へ渡った女性たちのことを指します。この習慣は、遠く離れた地で働く男性が、写真と履歴書のみを交換して結婚を決め、その後、女性が渡航するというものでした。この慣習は、移民を制限する政策の中で、日系社会を存続させるための苦肉の策として生まれました。

写真花嫁の登場

1907年から1908年にかけての日米紳士協約により、再渡航や家族呼び寄せ以外の日本人の移民が禁止されました。この結果、現地の日系社会は存続の危機に瀕しました。そこで、写真花嫁という方法が用いられるようになりました。これは、男性が日本にいる女性と写真と履歴書を交換し、代理人を立てて結婚式を挙げ、入籍後に査証を発給してもらうというものでした。これにより、1924年の排日移民法が成立するまでの間に、2万人以上の女性が写真花嫁として渡米しました。

写真花嫁の経緯

写真花嫁の渡航は、1908年から1920年までの間に集中しました。1885年に日布移民条約が締結され、日本人のハワイへの移民が始まりました。当初は官約移民、その後は私約移民、そして自由渡航移民へと変化しましたが、1908年に移民が禁止されると、家族呼び寄せが許可されるようになりました。この状況下で、写真花嫁が重要な役割を果たすことになりました。

1885年に最初の官約移民がハワイに到着して以降、日本人移民は急速に増加し、1900年にはハワイの人口の約40％を占めるようになりました。しかし、1908年の移民禁止は、排日運動の高まりを受けた日米紳士協定によるものでした。多くの日本人男性は、当初は出稼ぎのつもりでしたが、低賃金のために帰国できず、現地で家庭を築くことを考えるようになりました。しかし、異人種間の結婚が禁止されていたため、写真花嫁に頼る以外に方法はありませんでした。

1911年から1919年までの間に、ハワイに渡航した写真花嫁は約9,500人に上り、アメリカ本土でも1910年から1920年の間に女性人口が大幅に増加しました。

写真花嫁の手続き

経済的に余裕のある男性は一時帰国して結婚しましたが、そうでない場合は、日本にいる家族や親戚に頼らざるを得ませんでした。当時の日本では見合い結婚が一般的だったため、写真と履歴書を交換して結婚を決めることに抵抗はありませんでした。結婚が決まると、代理人を立てて結婚式を挙げ、入籍後に査証が発給されました。その後、数ヶ月から2年ほど文通をし、夫の呼び寄せによって渡航しました。船旅を経て、移民局で初めて夫と対面することになりました。

写真花嫁として渡米した理由

写真花嫁が外国の男性との結婚を決意した理由は様々でした。一つには、家制度や道徳規範があり、親が決めた結婚を拒むことは考えられなかったことが挙げられます。経済的な理由も大きく、貧しい家庭では娘を養うことができず、少しでも早く結婚させたいという意向がありました。また、アメリカが豊かな国だと聞かされていたため、娘からの送金を期待する親もいました。

さらに、日本の姑との不和や、婚期を過ぎた女性の不安も、写真花嫁になる理由となりました。一方で、アメリカへの好奇心や、新しい生活への憧れ、日本の伝統的な女性の役割に違和感を覚え、自由を求めて写真花嫁になる女性もいました。

失望と苦難

多くの写真花嫁は、実際に会った夫に失望しました。男性は女性よりも年上で、写真と違うことが多かったのです。写真は昔のものであったり、修整されたものであったり、中には偽の写真もありました。夫の職業や財産に関する情報も、多くが偽りでした。花嫁は長旅の疲れを癒す間もなく、農作業に駆り出されることもありました。

多くの女性は、言葉の壁や文化の違いに苦しみ、夫との間に大きな隔たりを感じました。中には、すぐに日本に帰りたいと思う女性もいましたが、経済的な理由や社会的な制約から、それを実行に移すことはできませんでした。彼女たちは、日本人の精神性である「我慢」という言葉を口にしながら、過酷な生活に耐え忍びました。

写真花嫁の貢献

写真花嫁たちは、日系社会の存続に大きく貢献しました。彼女たちは家庭を築き、子供を育て、文化を伝承しました。彼女たちの苦難の歴史は、日系社会の強さを示すものであり、多くの作家や映画監督が彼女たちの物語を描いています。

排日運動と写真花嫁の廃止

アメリカの排日論者は、写真花嫁の習慣を野蛮なものだと批判し、移民制限を求める声を高めました。その結果、1920年に日本政府は写真花嫁への旅券発給を停止し、妻が夫と共に渡航する場合のみに限定しました。この取り決めは、淑女協定と呼ばれています。

1924年の移民法（排日移民法）により、日本を含むアジアからの移民は全面的に禁止されました。

他国の写真花嫁

韓国からも、同様に写真花嫁が渡米しました。1910年から1924年の間に、約1,000人の韓国人女性が写真花嫁として渡米しました。彼女たちの背景には、日本統治下の韓国から逃れたいという思いがあった人もいました。また、アルメニア人虐殺後、アメリカに移住したアルメニア人男性が、オスマン帝国からアルメニア人女性を写真花嫁として迎え入れたという事例も存在します。

まとめ

写真花嫁という慣習は、移民政策の変遷や社会情勢、個人の様々な事情が複雑に絡み合って生まれたものでした。彼女たちは、異国での生活で多くの苦労を経験しましたが、日系社会の存続に大きく貢献しました。彼女たちの物語は、今もなお、私たちに多くのことを教えてくれます。

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