日米紳士協約

日米紳士協約

日米紳士協約（Gentlemen's Agreement of 1907）は、日本とアメリカ合衆国の間で成立した非公式の協定であり、1907年に結ばれました。この協定の主な内容は、日本がアメリカへの新規移民を認めない一方で、アメリカが既に滞在している日本人移民に対しては制限を課さないというものでした。この協定の背景には、当時のアメリカ社会における人種差別や公立学校での日本人児童の隔離があったことが挙げられます。協定は公式なものではなかったことから、アメリカ議会での承認を受けることはありませんでしたが、その影響は長期にわたって続きました。

背景

日本からの移民は、1852年のゴールドラッシュによって先行する中国からの移民の急増とともに、アメリカへの人の流れを生み出しましたが、日本政府は当初、厳しい鎖国政策を施していました。しかし、1868年以降に主体的な改革が進むことで、日本からの移民が始まり、1885年にはハワイ王国に最初の日本人労働者が到着しました。多くの日本人はアメリカで永住を望み、家族単位で移住する人々が増えていきました。彼らはアメリカの社会規範に徐々に同化し、宗教面ではメソジスト教会や長老派教会に入信する例も見られました。

しかし、カリフォルニアにおける日本人移民の増加は、アメリカ社会の中で反日感情を引き起こす要因となりました。1905年には、日系人がチャイナタウンだけでなく全米に広がり、当時の新聞『クロニクル』にも反日的な記事が多く掲載されるようになったのです。この年、設立された日本・朝鮮人排斥同盟は、以下のような施策を提唱しました：

1. 中国人排斥法を日本人や朝鮮人にも適用すること
2. 日本人移民の排除及びその雇用をしている企業への圧力
3. 学校での日本人と白人の子供の分離を求める圧力

このような反日感情の高まりの中で、日本は1905年の戦争でロシアに勝利したことを背景に、対等な扱いを求めました。その要求に基づき、1907年末から1908年初めにかけて、日米間で交わされたのがこの日米紳士協約です。

協定の内容

協定の具体的な背景には、カリフォルニアにおける人種差別がありました。特に、サンフランシスコの教育委員会が1906年に日系人の子供を隔離する方針を採用したことが、大きな問題となりました。これに対してアメリカ政府は、排斥運動の過激化には懸念を示しており、日本との協議を求めました。

この協定によって、日本はアメリカへの新規移民を実質的に制限し、パスポートの発行を行わないことに同意しました。しかし、アメリカ側はすでにアメリカに住んでいる日本人移民は受け入れ、彼らの妻や子供、両親を移民として受け入れること、さらにカリフォルニアやサンフランシスコの学校における法的な差別を回避することに合意しました。

この協定は、偏見を根拠とする移民に関する法案がアメリカにおいて通過しないようにしたい日本の意向と、アメリカの大統領セオドア・ルーズベルトが日本を刺激するような正式な移民規制を避けたかった理由から成立したものでした。最終的にこの日米紳士協約は、1924年に制定された排日移民法まで継続的に影響を及ぼしました。

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